JR中央・総武線「中電病」の謎! 運転士の体調不良続出、大丈夫か? 因果関係ナシも、イギリスで病欠多発の現実! 集団異変を考える
英国各地で起こる運転士の体調不良

英国を中心に欧州に滞在することが多い筆者(鳴海汐、国際比較ライター)が海外に目をやると、英国でも運転士の集団体調不良が各地で起こっている。
「中電病には直接関係がない」
が、これらも原因が解明されておらず謎のままということで紹介したい。
ひとつめは、ロンドンの地下鉄の運転士である。運転士や駅員はオフィス勤務の従業員よりも病欠が多い(2024年3月13日付け『My London』)。以前からトンネル内の大気中の微小粒子状物質(PM2.5)が問題視されていた。運転士や駅員は、家に帰って鼻をかむとティッシュが真っ黒になる。
「シフトを終えると咳が出る」
「呼吸困難、喘息、副鼻腔炎を患った人たちもいる」
という(2020年3月3日付け『BBC』)。喘息持ちの運転士は乗車時に症状が悪化するのでマスクが欠かせない。配布される特殊なマスクのフィルターは、使用後は真っ黒になる。PM2.5はレールとブレーキの摩擦によって発生するもので、直径2.5ミクロン以下の非常に小さな粒子である。主成分は酸化鉄だが、微量の石英、クロム、銅が含まれている。
屋外の大気汚染が健康に与える影響に関する研究では、PM2.5への曝露と
・肺がん
・喘息
・心臓病
との間に明確な関連性が見つかっているが、トンネル内で発生するPM2.5の場合は関連性が見つかっていない。
インペリアル・カレッジ・ロンドン主導で2014年から6年間の地下鉄職員約3万人を対象にした調査では、PM2.5レベルが最も高い地域で働く職員の病欠が多い傾向にあることも明らかになっている。(2024年3月15日、『Safety Management』)
・古い電車や深いトンネルのある路線で働く運転士
・複数の路線が乗り入れる駅のスタッフ
はPM2.5に多く曝露していた。これはロンドンの屋外空気の15倍になる可能性がある。8路線中5路線の運転手は、あらゆる原因による病欠率が高かった。呼吸器感染症による病欠日数が多かった路線もある。だが、曝露レベルと病欠率の直接的な関連を証明する十分な証拠は見つかっていない。
研究者は、現在使用している方法で得られるPM2.5の量は少ないので、人体に影響が出るには長い時間がかかる可能性を示唆している(2024年3月13日付け『My London』)。しかし組合員は、このPM2.5の曝露レベルは「経営陣は英国の基準内だと主張するだろうが、世界保健機関が定めた基準をはるかに上回る」として、不安が隠せない。