「軍事マニア」はなぜ劣化したのか? ミリタリー記事が「スーパーカー記事」に酷似する構造的理由! 性能至上主義&批評不在がもたらす「思考停止」のワナとは

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ミリタリー記事は、数字の羅列と性能至上主義、そして批評の欠如という独特のスタイルを持つ。それは、かつてのスーパーカー記事の手法を引き継いだものだ。本質を問わず、高性能=優秀という単純化された評価軸が生まれ、やがて暗記の文化へと変質していった。では、なぜこうした形式が定着し、軍事趣味の思考を狭める結果を招いたのか。その背景を掘り下げる。

数字の追求

 実際に、ミリタリー記事とかつてのスーパーカー記事は酷似している。

 第1には、数字の追求である。

 スーパーカー記事は数字を列挙していた。車体重量、車軸距離、馬力、トルク、空力抵抗と、ひたすらに数字を挙げていた。

 しかも、無意味なまでに細かく示そうとする。例えば単位は小数点以下2桁まで示す。実態との差異は考えない。重量はタイヤ次第で1kg単位で変わる。馬力やトルクは個体差や当日の空気密度、当時であれば燃料比重の影響も受ける。空力抵抗もトリムで変化する。だがそれは気にしない。

 これはミリタリー記事と共通している。例えば、ゼロ戦やF-35のような戦闘機の寸法はセンチやミリ単位、記事によれば0.1mmで示す。いかに微細に至るまで紹介を尽くすか。それが記事の役割と考えているからである。

 数字の意味に無頓着なことも同じである。

「ゼロ戦はミリ単位の精密さがあるか」とは考えない。戦争中となると勤労動員で女学生が作っており完成検査の水準も軟化している。繰り上がり、繰り下がりから1cmの誤差はある。

 F-35以下では0.1mm刻みとなる。これは無意味な換算をした結果である。参考元とする数値はインチ単位で丸めてある。それに25.4mmを乗じたあとで、わざわざ0.1mm単位の端数も残すからである。

 航続距離では正確に間違える例も見られる。飛行機の1マイルは1852mないし53mである。しかも現場の換算は「2倍して1割引くと1.8km」や「ざっと2000フィート」程度だ。それを陸上マイルで、しかもわざわざ1609.34mの桁数で換算するからである。

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