トラックドライバー激怒? 高速道路「深夜割引」で休憩場所がない… 深夜手当増加&SA・PA満車、働き方改革と逆行する新制度の矛盾とは
2025年春に刷新される高速道路の深夜割引制度は、表面上は運送業界に恩恵をもたらすように見える。しかし、深夜労働手当の増加や休憩施設不足、コスト構造の変化を考慮すると、長期的な影響は予測が難しい。新制度が業界全体に及ぼす影響を深掘り、果たして「得」といえるのかを問う。
深夜依存の悪循環

新制度が発表された際、多くの運送事業者は割引適用時間の拡大によって柔軟な運行計画が可能になると期待していた。しかし、実際には深夜に走るほど得をするという構造が強化され、企業が夜間運行を選ばざるを得ない状況に追い込まれる可能性がある。
これは、事業者にとって選択肢が増えるのではなく、深夜運行を強いられる方向に作用する。結果として、日中の輸送需要が減少し、トラックドライバーの労働環境がさらに厳しくなる懸念がある。
また、深夜割引を受けるために物流スケジュールを無理に変更すれば、荷主側との調整コストが増大し、企業間の交渉力の格差が拡大する可能性もある。
この制度は、一部の大手物流企業にとっては利益をもたらすかもしれないが、体力のない中小事業者にとっては適応するしかない構造になりかねない。
国は新制度を物流の効率化に寄与するとして打ち出しているが、現実には現場のドライバーや中小企業に新たな負担を強いる可能性が高い。
さらに、今回の深夜割引制度の改革は高速道路料金の一部を調整するものであり、物流業界の構造的課題である
・人手不足
・長時間労働
・運賃の適正化
といった根本的な問題には対応していない。
本来であれば、運賃の適正化(割引制度ではなく、適正な輸送コストを確保するための施策)、休憩施設の充実(SA・PAの駐車場増設や仮眠施設の拡充)、労働環境の改善(深夜労働の是正や柔軟な勤務体制の導入)など、総合的な施策が求められる。しかし、現段階では高速料金の調整だけが先行している。