トラックドライバー激怒? 高速道路「深夜割引」で休憩場所がない… 深夜手当増加&SA・PA満車、働き方改革と逆行する新制度の矛盾とは
駐車場不足が引き起こす新たな危機

割引制度の恩恵を享受しようとする運送事業者が直面する最大の問題は、深夜労働手当の増加である。労働基準法では、22時から5時の労働には25%以上の割増賃金を支払う義務がある。新制度では、この時間帯に運行することでより高い割引を受けられるが、その結果、ドライバーの給与負担が増加し、企業全体の支出がむしろ膨らむ可能性が高い。
さらに、現在の物流業界では深夜労働に対する敬遠傾向が強まっている。政府が推進する「働き方改革」は、長時間労働の削減と労働環境の改善を目的としているが、ドライバー不足が慢性化するなかで、深夜運行を前提とした割引制度は国家方針と矛盾している。このような状況で考慮すべきは、
「本当に運送事業者にメリットがあるのか」
という点だ。表面的な割引率だけを見ると得に見えるが、全体のコストを考慮すると必ずしも得とはいえない。
新制度では、深夜割引を受けるために料金所手前で待機する車両が減少するとされている。しかし、これは一見すると「よいこと」のように思えるが、実際には新たな問題を引き起こす可能性がある。
例えば、これまでサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)で仮眠を取っていたドライバーが、深夜割引を最大限活用するために休憩時間を調整しなければならなくなる。しかし、日本の高速道路における駐車スペース不足は深刻であり、特に深夜帯のSA・PAでは満車が常態化している。この状況で新制度が導入されると、ドライバーは休憩場所の確保が難しくなり、道の駅やコンビニの駐車場、最悪の場合には路上での違法駐車が増える可能性がある。
こうした問題が顕在化すれば、社会全体での安全性低下につながる恐れがある。無理な運行スケジュールや休憩不足による事故の増加、周辺住民からの苦情増加といったリスクも考えられる。