ガスト、デニーズ… なぜ「ファミレス」は郊外に多いのか? いまや高齢者の憩いの場から学生の自習室まで、郊外生活を支える意外な役割とは

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ファミリーレストランは、食事の場にとどまらず、郊外の交通・地域社会を支える重要な「ハブ」として機能している。高齢者の交流拠点や若者の学習スペース、ビジネスの打ち合わせ場所として多様な役割を果たし、EV充電設備やテレワークスペース導入など、今後の進化にも注目が集まる。

「第三の空間」としての機能

ファミレス(画像:写真AC)
ファミレス(画像:写真AC)

 ファミレスは家庭(第一の空間)や職場・学校(第二の空間)とは異なる、人々が仕事や家庭以外でリラックスし、交流を深める場所としての役割を果たす

「第三の空間(サードプレイス)」

として機能している。都市部ではカフェがこの役割を果たすことが多いが、郊外ではファミレスがその代わりとなっている。

 近年、ファミレスは高齢者の交流の場としての役割を強化している。郊外の住宅地では、退職後の高齢者が日中を過ごす場所が限られている。公園や公民館もあるが、冬や悪天候の時には利用しにくい。一方、ファミレスは手ごろな価格で温かい飲み物を提供し、長時間滞在できる空間を提供する。モーニングの時間帯には、新聞を広げながら談笑する高齢者グループが目立つ。こうした光景は、郊外のファミレスでは珍しくない。

 都市部ではカフェで勉強や仕事をする人が多いが、郊外では選択肢が少ない。そのため、ファミレスはその代替として利用されることがある。Wi-Fiが完備され、電源が使える店舗も増えており、ノートPCを開く若者も見かける。特に大学受験を控えた高校生にとって、ファミレスは「自習室」として機能する。塾に通うには費用がかかるが、ドリンクバーで数時間過ごすなら数百円で済む。こうした利用方法は、郊外の教育環境にも関係している。

 郊外では、カフェよりもファミレスの方が打ち合わせの場として選ばれることが多い。特に営業職やフリーランスの人々にとって、駅周辺に適切なミーティングスペースが少ない地域では、ファミレスが「簡易オフィス」として活用される。ファミレス側も、こうしたニーズを意識して、平日のランチタイムを過ぎると静かな空間を提供する店舗も増えている。これは、都市部のコワーキングスペースとは異なる「郊外型ビジネス環境」の一例だ。

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