ガスト、デニーズ… なぜ「ファミレス」は郊外に多いのか? いまや高齢者の憩いの場から学生の自習室まで、郊外生活を支える意外な役割とは
ファミリーレストランは、食事の場にとどまらず、郊外の交通・地域社会を支える重要な「ハブ」として機能している。高齢者の交流拠点や若者の学習スペース、ビジネスの打ち合わせ場所として多様な役割を果たし、EV充電設備やテレワークスペース導入など、今後の進化にも注目が集まる。
郊外にファミレスが多い理由

ファミレスは都市部にも存在するが、特に郊外ではその存在感が際立つ。その理由を考えるためには、郊外の発展過程を振り返る必要がある。
戦後の高度経済成長期に、日本各地で都市の拡大が進んだ。特に1970年代以降、自動車を前提とした郊外住宅地の開発が本格化し、人口が都心から外縁部へと広がった。この郊外化とともに増えたのが、ロードサイド型の商業施設である。
従来、日本の飲食店は駅前や商店街に集まることが一般的だった。しかし、郊外では人口密度が低く、公共交通も限られるため、クルマでのアクセスを前提とした店舗が求められた。これに適応したのが、広い駐車場を備えたファミレスだった。
ファミレスは、駐車場を完備し車での来店を前提にしていることや、広い店舗面積を確保し家族連れやグループに対応すること、長時間の滞在が可能な空間を提供すること、豊富なメニューで子どもから高齢者まで対応できることなど、郊外のライフスタイルに適合していた。
その結果、ファミレスは郊外に暮らす人々の日常に組み込まれた。しかし、その役割は単なる「食事の場」にとどまらず、地域社会にさまざまな影響を与えることとなった。