運送業界に横行? 「代わりならいくらでもいる」と言ってはいけない根本理由! 物流クライシスを招く「安さ至上主義」の末路とは
「御社の代わりならいくらでもいる」という言葉がビジネスにおける危険な誤解を生んでいる。運送業界の人手不足は深刻化し、2030年には輸送能力が34.1%不足する可能性も。価格競争に頼るだけでは、信頼を失い、長期的には企業に大きなコストとリスクをもたらす。
「代わりはある」は幻想

まず、「代わりはいくらでもある」という言葉が現実とどれほど乖離しているかを理解する必要がある。
例えば、運送業界においては、トラックドライバーの人手不足が深刻な問題となっている。政府の調査によれば、営業用トラックの輸送能力が2030年には34.1%不足する可能性があるという試算が出ており、運べる貨物量は年々減少していく。その一方で、今もなお「この運賃で無理なら他に頼む」といい放つ発注者が存在する。
このような発言の根底にあるのは、
「他の業者に頼めばいい」
という思い込みだ。しかし現実には、どの運送会社も人手不足で、既存の取引先の仕事で手一杯である。仮に別の業者を見つけたとしても、同じ条件で受けてくれる保証はなく、むしろ、より高い運賃を求められる可能性が高い。
製造業やIT業界、サービス業でも同様のことがいえる。例えば、ある部品メーカーが
「御社の部品がなくても、他に供給できる会社はある」
といわれたとしよう。確かに代替供給先はあるかもしれないが、
・品質基準
・納期の調整
・技術的な相性
を考慮すれば、簡単に切り替えられるわけではない。短期的には乗り換えられたとしても、その過程で大きなコストが発生するだろう。
つまり、「代わりはいくらでもある」という言葉は、多くの場合、事実に基づいたものではなく、企業のサプライチェーンやビジネスの持続可能性を脅かす危険な考え方である。