広島と愛媛の「この場所」に、なぜ橋を作らないのか?
離島架橋は地域振興のカギとなるが、広島県の芸予諸島の未完成架橋計画が示すように、単なるインフラ整備では効果が限られる。都市の活性化と広域的な交通ネットワーク構築が求められる。
「橋のない島が見せる新戦略
安芸灘諸島連絡架橋の8号橋が実現しない理由は明確である。架橋による利便性向上が、必ずしも地域の発展に直結しないという現実がある。
そのなかで注目すべきは、皮肉にも橋のない大崎上島の取り組みである。竹原市との間は依然として船でしかアクセスできない同島は、「第2次まち・ひと・しごと総合戦略」を策定し、移住・定住促進を重点政策として掲げている。特筆すべきは、ポッカサッポロと提携した檸檬農家の新規就農促進策であり、これは単なる就農支援ではなく、企業との連携により安定した収入を見込む仕組みを構築している。
この事例は、離島振興の本質的な課題を示唆している。確かに架橋による利便性向上は重要だが、それ以上に求められるのは、地域固有の価値を見出し、それを持続可能なビジネスモデルとして確立することである。安芸灘諸島連絡架橋の8号橋が実現しない理由を探るなかで浮かび上がるのは、架橋という手段を超えた、より根本的な課題――地域経済の自立的な発展をどう実現するか――という問いである。
橋で接続されているにもかかわらず衰退している島々には、確かな魅力が存在する。特に、とびしまライナーが廃止され、アクセスがJR呉線新広駅前からの路線バスに限られている現状は、逆に島の魅力を引き立てているといえる。島を訪れた後は、大崎下島から竹原まで船で戻ることが、さらによい体験となるだろう。