交通系ICカードの時代は終わる? “熊本ショック”を契機に激化する「キャッシュレス覇権戦争」 デジタルチケットアプリのメリットをご存じか

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公共交通のデジタル化が進展するなか、特に注目されるのが「デジタルチケットアプリ」の導入だ。キャッシュレス決済の普及により、地方都市を中心に低予算で多様な運行プランが実現可能となる一方、導入地域での普及状況は課題を抱えている。これにより、公共交通の仕組みが再設計されつつあり、その今後の展開に期待がかかる。

“熊本ショック”が切り開く新時代

交通系ICカード(画像:写真AC)
交通系ICカード(画像:写真AC)

 鉄道やバスなどの公共交通での「クレジットカードタッチ決済」の導入が進んでいる。

 三井住友カードが主導する鉄道でのタッチ決済や、国土交通省による完全キャッシュレス決済バスの導入、さらには熊本県の交通事業者が一斉に交通系ICカードの取り扱いを中止した“熊本ショック”が、私たちの生活にも影響を与えつつある。交通系ICカードの独占状態に亀裂が入ったのだ。

 その一方で、公共交通におけるキャッシュレス決済の覇権を巡る競争は激化しており、意外な存在が浮上してきた。登場したのは、

「デジタルチケットアプリ」

という新たな選択肢である。

鉄道チケット購入のオンライン化進展

駅すぱあとが東武鉄道との連携を開始(画像:ヴァル研究所)
駅すぱあとが東武鉄道との連携を開始(画像:ヴァル研究所)

 デジタルチケットアプリは、キャッシュレス決済プラットフォームそのものではない。

 クレジットカードやQRコード決済アプリ、銀行口座などと連携し、アプリ内でさまざまなチケットを購入できる仕組みだ。そのなかには、鉄道やバスのチケットも含まれる。

 2024年8月1日、経路検索サービス『駅すぱあと』が提供する『駅すぱあとアプリ』と、東武鉄道との連携が始まった。

 駅すぱあとアプリの経路検索結果に『NIKKO MaaS』や『川越れとろトリップきっぷ』のデジタルチケット販売ページへのリンクが表示され、ユーザーはオンラインで鉄道チケットやフリーパスを購入できるようになった。

三岐鉄道のキャッシュレス実証

京都丹後鉄道とKansai MaaSが連携(画像:Digital PR Platform)
京都丹後鉄道とKansai MaaSが連携(画像:Digital PR Platform)

 関西の鉄道事業者にも、同様の仕組みが導入されている。

 2024年10月1日、京都丹後鉄道を運行するWILLER TRAINSは、広域型MaaSアプリ『KANSAI MaaS』との連携を開始し、スマートフォンで京都丹後鉄道ワンデーパスを購入できる仕組みを整備した。

 さらに、三重県の交通事業者である三岐鉄道は、国土交通省が主導する完全キャッシュレスバスの実証実験に参加中だ。

 対象路線である三岐バス四日市大学線で導入されているキャッシュレス決済手段は、Quickrideと紙の定期券および回数券の2つのみであり、交通系ICカードやクレジットカードのタッチ決済は導入されていない。

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