函館線「小樽~長万部」廃線に漂う暗雲 全線「バス転換」は本当に賢い判断か

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北海道新幹線の2030年札幌延伸にともない、小樽~長万部間の函館線が廃線となる。バス転換で代替も黒字化には暗雲が漂っている。

全線バス転換でも課題山積

北海道新幹線(画像:写真AC)
北海道新幹線(画像:写真AC)

 しかし、維持のためには莫大(ばくだい)な負担がかかることも明らかだった。

 JR北海道は2019年、小樽~函館間の橋やトンネルなどの大規模修繕・維持に2018年から2037年までで約89億円かかると試算した。札幌延伸による経営分離前に、JR北海道がどこまで修繕を進められるかは判然とせず、路線維持からバス転換が強まる契機となった(『北海道新聞』2019年9月3日付朝刊)。

 沿線自治体では将来的な負担を考え、バス転換の方針が示されるようになった。そして、最後に残った小樽~余市間もバス転換を決定したのだった。合意が進んだ背景には、並行在来線維持よりも負担が少ないことに加えて、通学・通院などで利用する地域住民に対して、鉄道よりもきめ細かい運行ができることがあった。

 しかしバスに転換したところで、路線が将来も維持されるかどうかは分からない。

 1986(昭和61)年に廃止された胆振(いぶり)線の区間を走る代替バス(伊達市~倶知安町間)では、利用者減少から廃止論が浮上。2022年3月10日には沿線の喜茂別町長が町議会で、喜茂別町~伊達市大滝間で廃止を念頭に協議を行うことを明らかにしている。

 その要因は、自家用車の普及に加えて人口そのものの減少が上げられる。

 1988年度に38万人だった利用者は、2020年度に15万人まで減少。2020年度の収支は収入6000万円に対して、運行費が1億6500万円。赤字額は1億円を超えた。赤字は、国と北海道の補助金で5400万円を、沿線自治体が残りを負担している。各自治体は、バス転換時に国の交付金でつくった基金で赤字を埋めていたが、それもあと数年で底をつく(『北海道新聞』2021年6月6日付朝刊)。

 バス転換で負担額を減らして路線を存続しても、黒字は期待できず、結局は問題を先送りしているにすぎない。

 小樽~長万部間をバス転換した場合には、どうなるのか。2021年4月に行われた協議会で公表された試算によると、第三セクターで路線を維持した場合、30年間で累積赤字は926億円。対して、全線をバス転換した場合には96億円。小樽~余市間のみ鉄路を維持してバス転換しても、56億円の赤字となる。

 全線をバス転換しても赤字額は膨大だ。さらに、現在は余市町まで開通している北海道横断自動車道が延伸されれば、自家用車の利用が増える。また、長万部~蘭越間など、現在でも利用者の少ない部分はそもそもバス路線を設ける必要があるのかどうかも、課題となる。