なぜフランクフルトは「モビリティ天国」なのか? トラム人気、MaaSアプリ乱立……日本が学ぶべき「進化する交通事情」とは?【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(27)
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フランクフルトは多様なMaaSサービスが競い合う都市であり、革新的なモビリティソリューションが充実。路線バスや公共交通が選択肢として上位にない一方で、デジタルネイティブ世代にはブランドや知名度が重視される傾向も見られる。日本が直面する交通危機に対し、フランクフルトのプラットフォーム戦国時代から学ぶべき点が多い。
公共交通選択肢、見直しのとき

さまざまなMaaSアプリから提供される移動の選択肢は、事業主体の経営方針と直結しており、路線バスなどの公共交通が上位に表示されない、対象外のアプリも存在する。利用者にとってみれば、いずれMaaSアプリがどのような背景を持っている事業体かは見えなくなり、デジタルネイティブ世代にとっては、ブランドや知名度が大きな利用の基準となることも今後十分想定されよう。
一方でこのような危機感に対してベルギーのアントワープに代表されるように、地域の政策ニーズに合致した移動経路案内を提示するご当地MaaSも市と民間が連携して運用している取り組みも始まっている。
日本では戦後以来最大の交通危機が訪れており、移動のデジタル時代を迎えるにあたり、減便や終電の繰り上げを繰り返したその先には、MaaSアプリから路線バスや鉄軌道が選択肢として上位に出てこない、
時間帯によっては存在すらしない、そのような地方都市や移動サービスが出現するのではないかと危惧する。フランクフルトで起きているプラットフォーム戦国時代から今こそ日本が学び直し、官民連携によるMaaS推進の先導を期待したい。