なぜフランクフルトは「モビリティ天国」なのか? トラム人気、MaaSアプリ乱立……日本が学ぶべき「進化する交通事情」とは?【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(27)

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フランクフルトは多様なMaaSサービスが競い合う都市であり、革新的なモビリティソリューションが充実。路線バスや公共交通が選択肢として上位にない一方で、デジタルネイティブ世代にはブランドや知名度が重視される傾向も見られる。日本が直面する交通危機に対し、フランクフルトのプラットフォーム戦国時代から学ぶべき点が多い。

フランクフルトのモビリティ進化

フランクフルト市内のアマゾン配送はカーゴバイクが主流へ(画像:牧村和彦)
フランクフルト市内のアマゾン配送はカーゴバイクが主流へ(画像:牧村和彦)

 ドイツのフランクフルトアムマイン(以下、フランクフルト)、欧州中央銀行があり金融都市としても有名な都市だ。日本からのドイツ直行便の多くがフランクフルト国際空港行きであり、世界のハブ空港のお手本でもある。高速道路と鉄道が空港内まで乗り入れており、中心街までは30分弱の好立地なアクセス環境が自慢だ。特に新幹線(ICE)と空港が直結していることから、新幹線を利用すれば中心市街地まではわずか15分ほどの距離だ。

 空港にはタクシーも多数出迎えており、いずれもクリーム色の車両が目につく。もちろん自国でもあり車両の多くはメルセデルベンツが人気のようだ。フランクフルトは、空港でのタクシー不足もなければ、中央駅にはお客を迎え入れるタクシーの行列でごった返していた。懐かしいコロナ禍前の日本の原風景が今もここにはある。勿論他のドイツ都市と同様にライドシェアは駅前のタクシー乗り場には乗り入れできない。

 5年前には街中に電動キックボードが乗り捨てられている様子が印象的であったものの、最近は乗降場所が指定されており、整然とした環境を取り戻しているようだ。道路上の路上駐車スペースをマイクロモビリティ(小さい交通)用に転用し、広場内の特定のエリアを乗降可能エリアとしているなどさまざまな工夫がみられた。駅前をひっきりなしに行き交うトラム(路面電車)には自転車は列車内に乗り入れできるものの、電動キックボードは現在乗り入れ禁止だ。

 ライドシェアや電動キックボードなどの新しいモビリティサービスに対しては、時間をかけて都市になじませながら、従来の移動サービスにも十分配慮した新参者との距離感には、ある意味人間らしさも垣間見られた。

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