なぜフランクフルトは「モビリティ天国」なのか? トラム人気、MaaSアプリ乱立……日本が学ぶべき「進化する交通事情」とは?【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(27)

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フランクフルトは多様なMaaSサービスが競い合う都市であり、革新的なモビリティソリューションが充実。路線バスや公共交通が選択肢として上位にない一方で、デジタルネイティブ世代にはブランドや知名度が重視される傾向も見られる。日本が直面する交通危機に対し、フランクフルトのプラットフォーム戦国時代から学ぶべき点が多い。

市民に愛されるキャッシュレストラム

市内のトラム券売機からは現金でチケット購入はできない(画像:牧村和彦)
市内のトラム券売機からは現金でチケット購入はできない(画像:牧村和彦)

 また、日本の大都市から消え去ったトラムが今も街中に張り巡らされており、地上の景観を楽しみながら、ゆっくり移動できるトラム天国でもある。

 トラムのメリットを最大限活かし、駅前、メッセ、スポーツ施設、住宅地内、公園内、動物園前など、主要施設に停留所が直結しており、朝から夜遅くまで多くの市民が利用する、市民から愛されるモビリティサービスは健在だ。土日には名物のリンゴ酒を呑みながら市内を巡ることができる、真っ赤な観光トラムも人気だ。

 ドイツも日本と同様に現金主義の国と思っていたら大間違いだ。トラムに乗ろうと停留所に併設されている券売機に向かえば、現金お断りのメッセージが目に入る。ここフランクフルトにおいては、現金でチケットが買えない。中央駅などの券売機では現金での購入ができるものの、街中の券売機はすべてキャッシュレスとなっているから驚きだ。

 ちなみにビジター向けには市内の郊外鉄道やトラム、バスが1日乗り放題のチケットが購入できるだけではなく、グループで5人まで1枚のチケットで乗り放題となるお得な紙のチケットもある(もちろん、ご当地MaaSからデジタルチケットの購入も可能だ)。家族連れやグループでお出かけしやすい工夫は心憎い。

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