東京メトロの成長加速、カギは「私鉄連携」なのか? 上場後に広がる収益多角化を考える

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東京メトロの成長戦略は、2024年10月の上場を契機に非鉄道事業の拡大を加速。運賃以外の収入増や沿線開発を通じて収益源を多角化、企業価値向上を狙う。そのカギとなるのは定期外旅客運輸収入の増加と、私鉄やJRとの連携強化だ。

不動産戦略のカギ

東京メトロが保有する賃貸マンション「メトロステージ上野」。上野駅や入谷駅などを利用できる好立地が特徴(画像:大塚良治)
東京メトロが保有する賃貸マンション「メトロステージ上野」。上野駅や入谷駅などを利用できる好立地が特徴(画像:大塚良治)

 ただし、私鉄やJR沿線での不動産開発を行う場合、転入した住民が必ずしも東京メトロ線を利用するわけではないことに留意する必要がある。しかし、物件契約者に東京メトロ線の定期券割引券を提供するなど、利用を促進する施策を取ることで、東京メトロ線の利用を増やすことは可能だ。仮に契約者が東京メトロ線を利用しなくても、不動産事業自体の利益は増加するだろう。

 また、東西線や南北線は比較的長距離であるにもかかわらず、有料座席列車が運行されていない。東京メトロにこの点について尋ねたところ、

「有料座席列車及び指定席の導入は現在検討していないが、今後もお客様のニーズや動向、直通他社との協議等も踏まえて判断する」

との回答があった。個人的な意見だが、東西線とつながる東葉高速線沿線や南北線と直通する埼玉高速鉄道線沿線で不動産開発を行う際、東京メトロ所有の車両を新たに導入し、有料座席列車を運行すれば、

「着席通勤できる沿線」

という新しいブランドイメージを築くことができるのではないか。

 さらに、優秀な人材の獲得やブランドイメージの向上には、魅力的な職場環境や夢のある事業の創造が不可欠だ。まちづくり事業はそのための大きなポテンシャルを持っている。従業員のモチベーション向上や潜在的な人材へのアピールとなり、優秀な人材をつなぎ止め、さらに獲得することができる。例えば、小田急線海老名駅周辺の開発のように、

「テーマパークのようなまち」

を作り上げることも、東京メトロの財務力をもってすれば決して不可能ではない。

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