東京メトロの成長加速、カギは「私鉄連携」なのか? 上場後に広がる収益多角化を考える

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東京メトロの成長戦略は、2024年10月の上場を契機に非鉄道事業の拡大を加速。運賃以外の収入増や沿線開発を通じて収益源を多角化、企業価値向上を狙う。そのカギとなるのは定期外旅客運輸収入の増加と、私鉄やJRとの連携強化だ。

私鉄との連携強化

小田急60000形MSEによる千代田線直通特急メトロはこね号(成城学園前駅で大塚撮影)(画像:大塚良治)
小田急60000形MSEによる千代田線直通特急メトロはこね号(成城学園前駅で大塚撮影)(画像:大塚良治)

 以上の問題を踏まえ、東京メトロの成長戦略を考えたい。まず、東京メトロ線の通勤・通学利用者の実態を確認してみよう。

 通勤・通学利用者は主にふたつのパターンに分類できる。ひとつは、東京メトロ線の駅周辺に住む人々が、自宅と勤務先や学校の最寄り駅間を移動する「一次交通」として利用するケース、もうひとつは東京近郊の私鉄やJR沿線に住む人々が、都心のターミナル駅に到着後、東京メトロ線に乗り換えるか、直通列車を利用して山手線エリアに向かう「二次交通」として利用するケースだ。

 実際、2023年度の東京メトロ線の各駅乗降人員データを見ると、他社線との接続駅かつ直通運転接続駅である渋谷駅は72万1112人、他社線との接続駅である池袋駅は50万0694人、相互直通運転を行っている小田急線との接続駅である代々木上原駅は26万7748人となっている。

 東京メトロの2023年度の営業収益は約3893億円で、そのうち旅客運輸収入は約3240億円、全体の83.2%を占めており、鉄道事業が主要な収益源だ。しかし、人口減少にともない、都心と郊外を結ぶ私鉄やJR線の乗車人員が減少することが予想される。これにより、東京メトロの乗車人員や旅客運輸収入の減少に備えて、新たな事業の創出が求められる。

 現状、東京メトロの非鉄道事業の営業収益は、

・不動産事業:約137億円(全体の3.5%)
・流通・広告事業:約239億円(6.1%)
・その他:約37億円(1.0%)

にとどまっている(東京メトロ「2024年3月期 決算説明資料」)。大手私鉄やJR各社は非鉄道事業の拡大を進めており、その主な内容は不動産、レジャー・ホテル、流通などだ。東京メトロも、これらの取り組みを参考にし、特に

「他の私鉄と協力」

して他社の沿線開発に参画することが有望だと考えられる。

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