東京メトロの成長加速、カギは「私鉄連携」なのか? 上場後に広がる収益多角化を考える

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東京メトロの成長戦略は、2024年10月の上場を契機に非鉄道事業の拡大を加速。運賃以外の収入増や沿線開発を通じて収益源を多角化、企業価値向上を狙う。そのカギとなるのは定期外旅客運輸収入の増加と、私鉄やJRとの連携強化だ。

客単価向上のカギは非運賃収入

1人当たり定期外収入の客単価への貢献(画像:大塚良治)
1人当たり定期外収入の客単価への貢献(画像:大塚良治)

 客単価を増やす手段としては、主に次のふたつが挙げられる。

1.運賃値上げ
2.運賃以外の料金収入の確保

「1」が実現すれば、客単価の向上が期待できる。しかし、鉄道運賃の上限変更は認可制であり、簡単に実行できる施策ではない。また、値上げによる客離れの懸念もある。そのため、「2」が選択肢として浮上する。具体的には、定期外の旅客運輸収入を増やす策を講じることが重要となる。

 先のデータをグラフ化した結果、客単価と定期外旅客運輸収入との間には、定期旅客運輸収入との相関関係よりも強い相関があることがわかった(図参照)。

 2024年3月期の東京メトロの定期旅客運輸収入の割合は38.4%であり、定期外旅客運輸収入は

「61.6%」

を占めている。定期外旅客が競合路線に流れると、旅客運輸収入の減少が大きくなる懸念がある。東京メトロの1人当たり定期外旅客運輸収入は約175円で、定期旅客運輸収入の約100円の1.8倍弱となっている。24時間券などを除いた正規運賃で利用する定期外客の獲得は不可欠だ。

 乗車人員が減少しても現状以上の旅客運輸収入を維持するには、現在20社のなかで最も低い1人当たり定期外旅客運輸収入をさらに引き上げ、客単価の向上と非鉄道事業の拡大を進める必要がある。

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