東京メトロの成長加速、カギは「私鉄連携」なのか? 上場後に広がる収益多角化を考える
東京メトロの成長戦略は、2024年10月の上場を契機に非鉄道事業の拡大を加速。運賃以外の収入増や沿線開発を通じて収益源を多角化、企業価値向上を狙う。そのカギとなるのは定期外旅客運輸収入の増加と、私鉄やJRとの連携強化だ。
規制緩和で広がる非鉄道事業
筆者の大塚良治(経営学者)は10月、日本経済新聞の取材を受けた。その際、東京メトロは他の私鉄と協力し、他社の沿線開発に参画することで、東京メトロ線の利用促進が進み、相乗効果が生まれると話した。今回は、この内容をもとに、東京メトロの成長戦略についてさらに詳しく解説する。
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東京メトロ(東京地下鉄)は、2024年10月23日に東京証券取引所プライム市場に上場した。前身の帝都高速度交通営団が2004年4月1日に株式会社化してから約20年を経ての上場であり、長い時間がかかった。しかし、規制緩和を受けて非鉄道事業を着実に拡大してきたことが、今回の上場につながった。
前身の帝都高速度交通営団法第1条は
「帝都高速度交通営団は、東京都の区の存する区域及びその附近における於ける交通機関の整備拡充を図る為地下高速度交通事業を営むことを目的とする公法上の法人とす。帝都高速度交通営団は主務大臣の認可を受け前項の事業に関連する事業を営み又は之に投資することを得」(引用に際して、現代仮名遣いに変更)
と定めており、非鉄道事業の実施には国の認可が必要であった。営団の非鉄道事業は、ビル事業や高架下店舗の運営管理など限定的なものであったのと比べて、東京地下鉄株式会社法第1条第2項は
「会社(東京メトロ)は、前項の事業(東京都の特別区の存する区域及びその付近の主として地下において、鉄道事業及びこれに附帯する事業)を営むほか、同項の事業以外の事業を営むことができる」
と定め、非鉄道事業を自由に実施できるように規制が緩和された。
これにより、東京メトロの経営の自由度は拡大した。今後は上場会社として、企業価値向上を求める市場からの声に、非鉄道事業を上場前よりも拡大することで応える必要がある。