熊本「交通系ICカード廃止」はむしろ良かった? “大危機”から垣間見える「地方の選択肢」と、都心で広がる可能性とは

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2024年、熊本県の交通事業者5社がICカード決済を廃止し、全国の公共交通でクレカタッチ決済導入の波が広がるなか、交通系ICカードの未来はどうなるのか。都市と地方で異なるキャッシュレス戦略が進み、キャッシュレス導入の柔軟性が試される。

Suicaのビッグデータ活用

Beyond the Borderのイメージ(画像:JR東日本)
Beyond the Borderのイメージ(画像:JR東日本)

 まずはJR東日本の中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」について解説する。この戦略は、今後10年間における環境変化を見据えたプロジェクトで、主に

・移動の目的(地)づくり
・DXによる個客接点の強化

を目指している。DXとはデジタルトランスフォーメーションで、デジタル技術を活用してビジネスや社会、組織、文化を革新するプロセスだ。具体的には、業務の効率化や新たな価値の創造、組織文化の変革などが含まれる。

 例えば、Suicaから得られるビッグデータを活用し、デジタルプラットホームから利用者の目的や行動に応じた情報が送られる仕組みを構築する。その結果、改札機でSuicaを認識した瞬間にアプリを通じてデジタルクーポンなどが受け取れるようになる。利用者にとっては、「これから知りたい情報や受け取りたいクーポンが事前に届く」形となる。これは、Suicaをはじめとした交通系ICカードが

「単なる決済手段ではない」

ことを示している。特に、交通系ICカードにはクレジットカードにはない「定期券機能」がある。これにより、例えば「西東京エリアから都心まで通勤・通学している人がどれだけいるか」といった情報がビッグデータとして蓄積される。この点だけでも、交通系ICカードはクレジットカードを圧倒する「情報デバイス」であるといえる。

 また、Suicaをクラウド化することで、蓄積されたビッグデータをさまざまな分野で活用していくのが、まさに「Beyond the Border」のコンセプトである。

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