北陸新幹線「延伸」でも心配なし? 滋賀県「並行在来線」が経営分離されない、これだけの理由

キーワード :
, , ,
北陸新幹線の延伸にともなう並行在来線の問題について、滋賀県の湖西線と北陸本線は経営分離される可能性が低い。通勤需要や輸送密度が高く、JRが手放すことは難しいからだ。2023年度のデータも、利用実態を裏付けるものとなっている。また、国の運賃試算には懸念が残る。

湖西線の重要性と経営判断

 続いてよくある声が、

「並行在来線問題を滋賀県が飲むはずがない」

というものである。これについては小浜ルートで整備するにしても滋賀県は逃れられないだろう。並行在来線の経営分離なんて制度があるのは、JRの負担が重複しないようにするという配慮から生まれたものであるから、一応、特急が走っていた線区を分離するということにはなっている。

 けれども、現行制度から考えるに、並行在来線に並行する新幹線が滋賀県内を通っていないからといって滋賀県は関係ないとはならないだろう。だがこのようなトラブルは制度設計のときに想定できなかったのだろうかとは思う。JR西日本は並行在来線の処遇については言明を避けているが、次のいずれかのシナリオになることが想定される。

1.湖西線も北陸本線もJRのまま存続
2.福井県内の敦賀~近江塩津間のみハピラインふくいに移管
3.北陸本線を分離
4.湖西線を分離
5.湖西線も北陸本線も全線分離
(※湖西線については堅田以北、北陸本線については長浜以北など、一部区間のみの分離も想定されるが、JR西日本の輸送密度の統計では、湖西線と北陸本線の近江塩津~米原間については、途中で区間を分けた集計をしていないことから、一部だけ分離の可能性は低いと見ている)

 筆者としては可能性が高い順に、

「1 → 2 → 3 → 4 → 5」

ではないかと考えている。特に湖西線を手放す可能性は薄いのではないか。鉄道ライターの杉山淳一氏も自身の記事「北陸新幹線新大阪延伸「京都府水問題」で召喚される米原経由の亡霊」(マイナビニュース、2022年11月2日配信)で述べているように、湖西線には

「特急「サンダーバード」が新幹線に移行しても、湖西線内は新快速をはじめ、京阪神への通勤需要を考慮した列車が運転されている。線内需要が多い」

といった特徴がある。

 この利用実態を計る指標として「輸送密度」というものがある。輸送密度とは「旅客営業キロ1kmあたりの1日平均旅客輸送人員のことで、1日1kmあたりの平均乗車数として算出されるため、「輸送断面」「平均通過人員」と呼ぶこともある。計算式は、

「輸送密度 = 年間輸送人キロ ÷ 営業キロ ÷ 365日(うるう年は366日)」

となっている。もし、1日あたりの輸送人キロが出ていれば、

「輸送密度 = 1日の輸送人キロ ÷ 営業キロ」

でも算出できる。いまいちピンと来づらいと思うので例題を示す。あいの風とやま鉄道では、1日あたりの各駅間まで細かく通過人員(2023年度)を出しているので、この内、高岡~富山間を例に輸送密度を計算してみる。各駅間の通過人員は次のとおりである。

・高岡~越中大門間3.7km:1万3512人
・越中大門~小杉間3.7km:1万3663人
・小杉~呉羽間6.6km:1万5322人
・呉羽~富山間4.8km:1万6789人

この各駅間の通過人員に営業キロをかけて輸送人キロを出す。

・1万3512人 × 3.7km = 4万9994人キロ
・1万3663人 × 3.7km = 5万0553人キロ
・1万5322人 × 6.6km = 10万1125人キロ
・1万6789人 × 4.8km = 8万587人キロ
・合計:28万2259人キロ

そしてこの輸送人キロの合計を高岡~富山間の営業キロで割ると

「28万2259人キロ ÷ 18.8km = 1万5014人/日・km」

となり、あいの風とやま鉄道が公表している

「高岡~富山間平均通過人員(輸送密度)15,014人/日・km」

と同じになる。これが輸送密度の求め方であるが、この例題で数値感がつかめていただければ幸いである。この輸送密度が2000人/日・kmを切ると「廃線近しか」になると考えていただければと思う。もっとも3000人/日・km台でも、

「JRが積極的に残したい路線」

とはいえない。

全てのコメントを見る