黒字経営も、いまだ高い鉄道収入への依存度【短期連載】東京メトロ、破られた沈黙(3)

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東京メトロが10月23日に上場し、初値は1630円、時価総額は9470億円に達した。そのなかで、豊洲から住吉までの有楽町線と、白金高輪から品川までの南北線の延伸計画が進んでいる。2030年代半ばの開業を目指し、国と東京都が株式の半数を保有しながら、公共性と民営化の両立を図る挑戦が始まった。鉄道収入が減少傾向にあることが懸念される中、株主還元や新線建設の戦略が、未来の公共交通に大きな影響を与えることになる。

人口減少時代の挑戦

東京メトロのウェブサイト(画像:東京メトロ)
東京メトロのウェブサイト(画像:東京メトロ)

 現在、首都圏で新線建設が進められている背景のひとつは、2016年に国土交通省が出した答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」だ。

 この答申では、人口減少と高齢化という長期的な社会変化に適応しつつ、国際競争力を維持・強化し、災害に強い都市を造り、他の交通インフラとの連携を図るという複合的な目的が示されている。

 東京メトロを含む交通インフラ整備は、単なる移動手段の提供にとどまらず、都市の価値を高めるための戦略的な取り組みと考えるべきだ。

 東京メトロが掲げる

・配当性向40%という高水準の株主還元
・乗車証を含む株主優待制度

は、こうした戦略的価値が市場で評価されていることを示している。

 人口減少時代を見据えた新線建設と、積極的な株主還元策を両立させることは、公共交通機関としての使命と、上場企業としての株主価値向上の両方を目指す東京メトロの挑戦の始まりを意味している。この試みの成否は、日本における公共交通の未来を占う重要な指標になるだろう。

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