黒字経営も、いまだ高い鉄道収入への依存度【短期連載】東京メトロ、破られた沈黙(3)

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東京メトロが10月23日に上場し、初値は1630円、時価総額は9470億円に達した。そのなかで、豊洲から住吉までの有楽町線と、白金高輪から品川までの南北線の延伸計画が進んでいる。2030年代半ばの開業を目指し、国と東京都が株式の半数を保有しながら、公共性と民営化の両立を図る挑戦が始まった。鉄道収入が減少傾向にあることが懸念される中、株主還元や新線建設の戦略が、未来の公共交通に大きな影響を与えることになる。

収益減少の影響

南北線(画像:写真AC)
南北線(画像:写真AC)

 現在、黒字経営を続けている東京メトロは「成功」しているといえる。

 しかし、最も懸念される点は、依然として鉄道収入に依存していることだ。多角化を進めているものの、その収益は全体の約1割にすぎない。また、コロナ禍以降、収益自体も減少傾向にある。以下は、最近の決算数値だ。

●2020年3月決算
・営業収益:4331億4700万円
・自己資本比率:40.9%

●2024年3月決算
・営業収益:3892億6700万円
・自己資本比率:33.0%

東京メトロは依然として東京の交通の大動脈として多くの利用者に利用されているが、コロナ禍以降の需要の変化により、状況は深刻さを増している。特に、自己資本比率が

「年間平均で約2ポイント」

低下している点は気になるところだ。東京メトロもこの事実を認識しており、2024年3月期の有価証券報告書では

「事業等のリスク」

としてその旨を記載している。

「首都圏の人口動向については、中長期的には減少傾向となることが予想されています。また、首都圏における就業・就学人口の減少、高齢化の進展等による人口構造の変化や、テレワークやウェブ会議の進展・定着とこれに伴う通勤・移動需要の減少等の社会構造の変化が進んだ場合、さらには今後、首都圏における経済情勢の大きな変化、大企業の本社機能又は政府機関の東京都区部からの移転等が生じた場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります」

つまり、東京メトロは今後も東京の人口が維持されるか、あるいは拡大しなければ業績を維持できない企業なのだ。

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