EVシフトで本当に影響を受ける「自動車部品」は何か? 分野によっては事業拡大の見込みも
EVシフトの試練と変革

エンジン部品のサプライヤーは、EVシフトにより厳しい状況に置かれている。しかし、対応策として電動車向けの部品開発にシフトする事例も増えている。一方で、新たな技術開発にともなう研究開発費の負担が増えており、早急な対応が求められている。
豊田自動織機(愛知県刈谷市)は、エアコンコンプレッサー(車両の空調システムの重要なコンポーネントで冷媒を圧縮して循環させる)の分野で世界トップシェアを誇るサプライヤーだ。同社は、電動コンプレッサーの世界生産を2025年までに20%増強すると発表した。
従来のエンジン車ではエンジンからのベルト駆動でエアコンが動いていたが、電動コンプレッサーはHVやEV向けに専用の電動モーターで動く。豊田自動織機は早くから電動コンプレッサーの開発に力を入れた結果、この分野でも世界シェアが5割を達成している。エンジン車が減少しても、事業には大きな影響が出ないだろう。また、EVの需要が頭打ちになったとしても、HV向けにも使用できるため、エアコンコンプレッサーの主力製品になり得る。
一方、ニデック(京都市、旧社名・日本電産)は電動モーターや電動ポンプを主力製品としており、早くからEV向けの「eアクスル」分野に参入した。しかし、2024年には150億円の営業赤字に落ち込むなど厳しい状況にある。
eアクスルは、電動モーターと減速機、インバーター(電池から供給される直流を交流に変換する装置)などの主要駆動部品を一体化した製品で、小型軽量かつコスト削減にもつながる。ニデックは2020年ごろからこの分野に参入し、主に中国市場でシェアを伸ばしてきたが、競争が激化したため次世代製品の投入を急ぐ必要があった。
しかし、その結果として研究開発費が高騰し、150億円の営業赤字のうち約100億円が研究開発費に充てられているのだ。加えて、中国をはじめとする世界各地でEV競争が激化し、価格競争も始まったため、ニデックは非常に不安定な状況に陥っている。
自動車関連のサプライヤーはEVシフトにより大きな変革を求められているが、既存技術を発展させているサプライヤーにはビジネスチャンスが訪れている。一方で、新たな技術開発をともなう分野では研究開発費の捻出が難しく、例えばデンソーのエンジン関連事業の売却益がEV関連の研究開発費に充てられることもある。
急速に進展したEVシフトに対して、日本の企業は出遅れているとの声もあり、激しい競争が繰り広げられる時代になっている。