デンソー「燃料ポンプ不具合」1245万台 問題の“深層”は結局どこにあるのか?
デンソーが製造した燃料ポンプの不具合により、合計約268万台の車両がリコールされ、どの車両に取り付けられたか特定されていない燃料ポンプが5000個以上あることが判明した。
自動車メーカーの対応

朝日新聞は11月7日、「自動車部品最大手のデンソー製の燃料ポンプに不具合が相次ぎ、計約268万台(筆者注:国内のみ)がリコールされている問題で、どの車に取り付けられたか特定できない燃料ポンプが11月2日時点で、5千個超あることがわかった」と報じた。
トヨタが2020年に国土交通省と米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)に届け出て以降、ダイハツ、ホンダ、マツダ、スバル、スズキ、フォード、米サプライヤーのマグナソンが2023年11月までに計17回行っている。
筆者(大庭徹、技術開発コンサルタント)は自動車会社に30年以上勤務し、デンソーと燃料ポンプなどの設計を行っていた。その経験から、問題解決が長引いた要因や背景を推察する。
NHTSAへのリコール届によると、原因は「インペラと呼ぶ燃料を圧送する樹脂部品が特定の条件下で変形する」ことであり、変形を引き起こす製造上の要因を
1.インペラ(繊維強化PPS樹脂)が低密度で製造され、表面強度が低い場合
2.製造工程で使用される溶剤が乾燥し、長時間さらされた場合
のふたつとし、その結果、
1.インペラの成形温度が低いと低密度となり、燃料に浸漬されると「膨潤」という変形が発生する
2.燃料に浸漬されない状態が続く間に表面が変形する
とした。なお、燃料ポンプは製造後、デンソー社内で「燃料ポンプモジュール」に組み付けられ、自動車会社に送られ、燃料タンクに組み付けられる。この物流と中間在庫の期間、燃料に浸されることはない。
今回、不具合に至る成型温度の範囲など、定量的に絞り込み、真の原因を特定する。