トイレ撤去で信頼失墜? JRの“切り捨て体質”が招く鉄道危機、利用者軽視が招くトイレ行列の実態とは?
鉄道利用者の「トイレ不安」は高齢者や障害者にとって深刻な問題だ。JR各社が待合室やトイレの撤去を進めるなか、福井県のえちぜん鉄道は充実した設備で支持を集めている。需要に対して供給不足が顕著で、特に女性用トイレは男性用の3倍必要といわれている。
巨額投資の裏で忘れられる日常ニーズ

こうした問題を指摘すると
「設置や維持管理の費用を誰が出すのだ」
という反論を受けるだろう。しかしJR東海は巨額の費用を投じてリニア新幹線を建設している。当初は5兆5000億円と算定されていた事業費はすでに
「7兆円」(27%増)
に膨張している。しかもJR東海の自主事業と称していたのに「財政投融資」として
「3兆円」
の公費が投入されている。これに比べたら、日常の利用者の切実なニーズである「トイレ」の問題を緩和する程度の費用を惜しむことはなかろう。
観光重視の裏で無視される鉄道の基本

また他のJR会社ではこうした巨大事業はないものの、ひとりあたり最低でも数十万円の参加料金が設定されたクルーズトレインを運行している。これらは車窓の景観を売り物にしているが、景色がよいことは
「赤字ローカル線とほぼ同義」
である。待合室もトイレ一方も撤去された地域の駅を走り過ぎるクルーズトレインにはむしろむなしさを感じる。
前述の第三セクターの事例で示したように“日常の利用者”こそ大切にしなければ信頼を失う。
実は鉄道事業者にとって、クルーズトレインに何回か乗ってもらうよりも、平均的な勤め人が通勤、出張、そのほか日常の移動で鉄道を使い続けてもらうほうがトータルではるかに収入が多くなる。そんな“お客さま”に対してトイレくらいは十分に提供してほしいものだ。