トイレ撤去で信頼失墜? JRの“切り捨て体質”が招く鉄道危機、利用者軽視が招くトイレ行列の実態とは?
鉄道利用者の「トイレ不安」は高齢者や障害者にとって深刻な問題だ。JR各社が待合室やトイレの撤去を進めるなか、福井県のえちぜん鉄道は充実した設備で支持を集めている。需要に対して供給不足が顕著で、特に女性用トイレは男性用の3倍必要といわれている。
地域と駅トイレ

福井県を走る第三セクターの「えちぜん鉄道」元常務の伊東尋志(ひろし)氏が、専門誌の対談で
「定期券をお持ちの方はお客様の中で一番大事にしないといけません」
「福井駅が高架化される前、古い駅設備でとても申し訳なかったのは、やはりトイレなんです」
「新しい駅のトイレは明るさや広さはじめいろいろな要素を含めて気合を入れてつくりまして」
と語っている(『運輸と経済』2021年9月号)。そうした取りくみの積み重ねにより同社は利用者からの支持を集め、新型コロナの緊急事態宣言下で、しかも典型的な「クルマ社会」の福井県でありながら、定期客ではほぼ例年なみを維持という成果を残している。
他の第三セクター事業者でもトイレの整備に力を入れた例がいくつか報告されている。ローカル線の駅でもバリアフリー仕様のトイレが作られ、洗浄式便座まで設置されている例も見かけるようになり、旅行者としても大変ありがたい。ただしこれらの多くは鉄道事業者に代わって沿線の自治体が設置・管理する施設であり、駅の環境を維持したいのなら沿線の自治体が費用を負担すべきというのはひとつの考え方であろう。
ただ苦言すれば設置しただけで管理が無頓着な例もある。筆者が経験したJR東日本の東北地域の無人駅で、駅前にせっかく自治体が整備したトイレがあるのに施錠されていて、誰が管理しているのか
「連絡先も不明」
で使えなかったことがある。