四国と九州の「この場所」に、なぜ橋やトンネルを作らないのか?
7兆円波及の期待感

夢物語のように感じる人もいるかもしれないが、今、実現の可能性が確かに存在している。その後押しとなっているのが、九州の半導体産業の成長だ。九州は元々「シリコンアイランド」として日本の半導体産業の中心地だったが、今はさらに注目を集めている。
そのきっかけは、世界的な半導体メーカーである台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場の設置だ。このプロジェクトによる経済波及効果は
「約6兆9000億円」
と試算されている。TSMCの進出を契機に、熊本県内だけでなく九州全体で半導体関連産業への投資が活発化している。特に、長らく塩漬け状態だった熊本空港アクセス鉄道が実現に向けて動き出したことは注目に値する。
今、九州は「新生シリコンアイランド」として、世界的な半導体製造の重要拠点となる可能性を秘めている。
この動向は大分県にとっても重要だ。大分県では1970(昭和45)年に旧東芝大分工場(現JSC大分事業所)が操業を開始し、製造の後工程に強い企業が集まっている。また、新たな企業誘致に向けた動きも活発化している。
さらに、九州全体では福岡県を中心に
「東京への一極集中」
から脱却する動きが強まっている。例えば、福岡市はアジアのリーダー都市としての地位を確立するための取り組みを強化しており、スタートアップ企業への優遇施策など、将来的に成長が期待される産業への投資が続けられている。
日本全体では低成長や緩やかな衰退が予測されるなか、九州は半導体産業の成長によって異なる発展の可能性を示している。新たな産業拠点が九州で生まれようとしているのだ。
この半導体産業の成長機会を生かすため、豊予海峡ルートを含むインフラへの大規模投資は必要不可欠である。これらの背景から、豊予海峡ルートの実現は喫緊の課題であり、今こそ行動に移すべき時期だといえる。