四国と九州の「この場所」に、なぜ橋やトンネルを作らないのか?
豊予海峡に橋やトンネルを建設する計画が再浮上。半導体産業の成長が九州の重要性を高め、交通網整備で関西と直結するチャンス。巨額投資が必要だが、今こそ100年に一度の推進の好機。
九州と関西を180km短縮

果たして、豊予海峡ルートにはどのような価値があるのか。大分県が主催した「大分県広域交通ネットワーク研究会」は、2024年2月に報告書を県に提出し、豊予海峡ルートの整備が九州や四国、さらには日本全体に大きな効果をもたらすとした。
この報告書が示す豊予海峡ルートの効果は次のとおりだ。
・九州~関西間の輸送時間が大幅に短縮される。例えば、大分~大阪間の距離が約180km短縮
・フードアイランド九州のさらなる生産拡大
・関西や中国、四国地方との観光客等の往来増加
・大規模災害時の相互応援の迅速化、円滑化
さまざまな効果が期待されるこの報告書だが、重要なのは豊予海峡ルート単体ではなく、他のインフラ整備と組み合わせることで初めて効果を発揮するという点だ。報告書では「目指すべき方向性」として次の点が挙げられている。
●広域交通ネットワーク整備による半導体や自動車、農林水産業等の生産性向上、地域経済の成長力強化
・東九州新幹線(整備計画路線への格上げ)
・東九州自動車道(4車線化)、中九州横断道路(全線開通)、九州中央自動車道(全線開通)
現状、東九州新幹線は構想段階にあり、整備計画路線への格上げが求められているが、まだ実現には至っていない。一部区間では東九州自動車道の4車線化が事業中で、中九州横断道路のルートはほぼ決定し事業が進んでいるが、全通の時期は未定だ。九州中央自動車道も同様の状況にある。
これらの重要性が認識されているとおり、豊予海峡ルートは九州内の交通網が整備されたときに初めて効果を発揮する。単に大分県と愛媛県が結ばれるだけでなく、九州全体と瀬戸内経済圏、さらには
「関西経済圏」
との一体化が実現できるのだ。