日本企業とイスラエル軍需企業の関係が「東南アジア」でのビジネスを妨げるワケ 川崎重工業への抗議デモから考える
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パレスチナ支援団体が、川崎重工業にイスラエル製ドローンの輸入停止を要求、2万3000人の署名を提出した。イスラエルによるパレスチナへのエスカレートする攻撃は、日本企業の風評リスクを高めている。企業は地政学的リスクを注視する必要がある。
地政学リスクと企業の海外戦略

こういった状況では、日本企業のイスラエル企業との関係が、インドネシアやマレーシアなどイスラム教国におけるビジネスの
「阻害要因」
となるリスクが出てくる。これまでのところ、イスラエル企業との関係でイスラム教国におけるビジネスで大きな損害が生じたとの報道は聞かないが、現地の企業などが
「あの日本企業はイスラエルと提携しているのか」
と不信感を強め、それによって同企業の業界内でのレピュテーションが低下してしまうリスクがある。
無論、企業の海外ビジネスは常にリスクと隣り合わせにあるといったらそれまでだが、企業が直面する地政学・経済安全保障リスクが多様化するなか、日本企業としてはイスラエル情勢の動向を把握し、それが進出するイスラム教国でどう認識されているかなどを注視していくことが重要となろう。
伊藤忠商事の子会社である伊藤忠アビエーション(東京都港区)は2024年2月、イスラエルの軍事企業エルビット・システムズとの提携関係を2月末までに終了すると発表した。伊藤忠アビエーションは防衛装備品の供給などを担っており、防衛省からの依頼に基づき、自衛隊が使用する防衛装備品を輸入するためエルビット・システムズと協力関係の覚書を2023年3月に交わしたが、短期間のうちにそれが終わることになった。
ネタニヤフ政権が戦闘の停止を宣言すれば、日本企業を取り巻くこのレピュテーションリスクも低下していくことになろうが、同政権はその姿勢を一切示さず、長期的に戦闘が続いていく恐れがある。
また、仮にトランプ政権が復活することになれば、親イスラエルの姿勢がさらに鮮明となり、イスラエルとイスラムとの間に決定的な溝が生じ、日本企業にとってイスラエル企業との関係はいっそう難しいものになる可能性も考えられる。