壊滅的にモテない「鉄オタ」 しかし彼らがモテれば、社会は変わる! 日本を代表する社会学者「宮台真司」の著作を読み解く
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モテで社会がよくなる

ところで、宮台氏は、なぜモテる人が増えれば社会はよくなると主張しているのか。
よい社会には、目先の損得勘定である「自発性」でなく、それを超えた
「内発性(有徳)」
で行動選択する人が増える必要がある。内発性のポイントは「損得勘定を越える表出的な余剰(過剰)部分が含まれるところ」(2011年1月29日のXのつぶやき)という。この徳をもって、
「よいふるまいをしようと考える人々が多い社会」
がよい社会だとする。『きみがモテれば、社会は変わる。』から引用しよう。西洋最大の哲学者のひとりとされる、古代ギリシアの哲学者・アリストテレス(前384~322年)の名前を出して、こう説明する。
「アリストテレスは今からおよそ2500年前に、すでに「良い社会とは何か?」について論じていました。彼によれば「良い社会」とは「豊かな社会」でも、「犯罪が少ない社会」でもない。そんなことはどうでもいいのだ、と言います。「良い社会」とは、「徳」のある者たちがあふれる社会のことだ、というのです。「徳(ヴァーチュー)」とは「内から湧き上がる力」のことです。いわば〈自発性〉ではなく〈内発性〉。ちなみに、目先の損得勘定だけで何かを選ぶのは〈自発性〉、それを超えるものが〈内発性〉です。「徳 = 内から湧き上がる力」は、人々の尊敬・尊重(リスペクト)を集め、周囲に感染的な模倣 (ミメーシス)の輪を広げます。そのようにして社会のメンバーの多数が、有徳 = 内発的なふるまいをするようになった社会こそが、アリストテレスの言う「良い社会」なのです」
よいふるまいをする人は、他人を思いやって関わることができる人で、こういった人々はモテる。こうした人々が増えれば社会はいいほうに変わるということだ。撮り鉄で考えても、彼らが他人を思いやり、徳をもった行動をするようになれば、モテるようになるし、社会もよくなるということになる。
宮台氏は、
「大人が〈内発性〉を手に入れるためのほぼ唯一の道が、性愛実践です。歴史的に練り上げられた性愛実践を通じて、人は〈自発性〉を〈内発性〉に変化させることができます。それがわかれば、人は同じやり方を、性愛実践から外側に拡げ、あまたの社会実践に拡張すればよいのです」
としている(『東洋経済ONLINE』2013年12月26日付)。
「最後に勝つ、つまり幸せになるのは、どんな人間ともつながれるヤツ、ネットワークを通じて人を幸せにできるヤツ。つまり、「他人も自分も幸せになる」ために不可欠な力をもつヤツだけだ。自分が少々頭がいいことより、自分より頭のいいヤツに助けてもらえるほうが大切です。自分が腕力が強いのもいいが、自分より強いヤツに助けてもらえるほうが大事です。勉強だけしか能がない「いい人」より、まずは、遊びや経験を通じて経験値をあげた〈内発性〉の高いヤツになるのをめざすことです。そうすれば、モテは自動的についてきます」(『きみがモテれば、社会は変わる。』)
コミュニケーション能力を上げれば恋愛はできる。共感性といったコミュニケーション能力を上げる――。
恋愛は、モテは、社会を鉄オタを変えるのだ。