日本の「バス運賃」は安すぎる、だから即値上げすべき! というのは単なる暴論だ【リレー連載】ビーフという作法(1)

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WEB CARTOPの2023年11月7日付け記事は、路線バス存続には運賃値上げが必要だと主張。しかし、日本の生活者は高い運賃に消極的である。ロンドンやニューヨーク並みの運賃は不可能で、利用者減少の懸念がある。

批判点2「バス事業者の自助努力を阻害」

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 やみくもに運賃値上げを推奨すれば、業界全体がそれに振り回されかねない。生活者の支払意思額が厳しい状況を考えれば、適正な運賃支払額(事業者と生活者が合意できる運賃額)に落ち着くよう、バス事業者の自助努力が必要である。

 例えば、筆者は当媒体で、北海道拓殖バス(北海道音更町)のきのこ農園の運営や、東急バス(東京都目黒区)のラストワンマイル支援(バス停から先の移動の権利を確保する自転車や小型自動車の貸し出し)など、新たなビジネスの可能性について言及してきた。

 ほかにも、各地で始まっている貨客混載、スーパーの買い物バス、路線バス営業所の生活者への貸し出し、サウナバスのような企画バスなど、さまざまな新しいビジネスの可能性が議論されている。

 運賃値上げにかじを切らず、車両の買い替え期間の延長や嘱託雇用者・パート雇用者の増員など、路線バスドライバーの給与水準の底上げをはかるバス事業者も出始めている。「路線バスの運賃を上げれば解決する」という言葉が、多くの人が目にするメディアで独り歩きすると、社会はそれに流されてしまう。その結果、バス事業者がこの流れに乗る可能性も出てきてしまう。

 そもそも路線バスは、サービスを提供するバス事業者とそれを享受する生活者との共創によって維持されるべきものである。前述したように、運賃が高すぎればバスを利用する人はいなくなるし、収入が減ればサービスの維持は難しくなる。

 事業者の努力は不可欠であり、利用者との合意形成も重要である。したがって、事業者の自助努力を阻害するような主張は避けるべきである。むしろ、バス事業者の自助努力を促すことが重要である。

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