生活保護受給者でも“特別な事情”があれば、「車の所有」は当然の権利である
運転記録を求める背景

地方自治体が運転記録の提出を求める背景には、次のような懸念がある。
・生活保護受給者の賠償能力に懸念がある
・車は財産であり財産の活用は要最低限にとどめるべきである
・その他、低所得者とのバランス、公共交通の使い勝手、車の保有率など
賠償能力への懸念は「生活保護受給者が交通事故を起こしたら、誰が責任を負うのか。任意保険料を支払う余裕があるのか」というものだ。
特別な理由があって、生活保護受給者が車を所有する場合、任意保険の加入を原則求めている(静岡市 令和3年度 包括外部監査結果に係る対応状況一覧 6項 自動車/任意保険の加入指導より)。なぜなら、損害賠償責任を負担する経済力がないためである。
しかも、任意保険料は税金から支払われるのではなく、親族の援助がある場合や本人が働いている場合はその収入から賄われる(厚生労働省|課長通知問12の1-4、2-4)。ただ、担当者のレベルや個別のケースを見ると、任意保険の加入が徹底されていないケースもあり、事故後の賠償責任などで問題が生じている。
第二に、車は財産とみなされ、原則として所有することができない。たとえ最低限の価値であっても、財産の活用は必要最低限にとどめるべきという問題が出てくる。生活保護受給者が病気療養や社会復帰のためにどうしても車が必要な場合、最低限の価値しかない場合、所有することは認められている。
ただし、車という財産を活用する距離や目的も最低限認められる範囲内であるべきという考え方もある(厚生労働省-生活保護に関するQ&A、p.83)。冒頭のケースでも、車は財産なので、使用頻度や目的を明確にして、必要最低限にとどめてくださいというのが、運転記録を求められた理由のひとつと考えられる。
生活保護制度発足当時の自動車の価値を考えれば、自動車が財産とされる理由は容易に理解できる。しかし、今の時代に
「安価な自動車」
が財産といえるのか、はなはだ疑問である。