コロナ禍でも大活躍! 自衛隊が「台風・地震」以外でも柔軟に行動できる根本理由
災害派遣の歴史
台風や地震といった大規模災害のときに自衛隊が出動するのはもはや当たり前だ。大規模災害だけでなく、コロナ対応のような一見出動するとは思えない事案であっても、コロナワクチン接種所の開設という形で自衛隊は協力している。それではどうして自衛隊はこの種の活動に参加するのだろうか。今回はこの点について考えていきたい。
実は、自衛隊と災害派遣の関わりは古い。前身の警察予備隊から災害には派遣されていた。最初の出動は1951(昭和26)年10月14日から15日にかけて九州地方に上陸したルース台風で発生した被害に対する救助活動とされている。災害派遣は自衛隊にとっては重要な任務であるが、警察予備隊時代から災害派遣に積極的出会った理由は、
「国民の支持獲得」
であったと自衛隊と災害派遣の関連に詳しい流通科学大学の村上友章は指摘する。
警察予備隊が発足した頃はまだ先の大戦の記憶も残っており、
「軍隊に対する忌避感」
も大きかった。警察予備隊が発足した後、課題となっていたのは国民の協力である。新国家の新組織である以上、国民の理解を得ることが不可欠である。旧軍と同様のことは許されないと発足に関わった人々は考えていた。一方で国民の支持を得られなければ、作戦遂行に支障をきたすという現実的な要請もあった。
警察予備隊、保安隊、自衛隊と名前を変えても、災害派遣は続けられた。1990年代以降、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件など、重大事件や大規模災害が起きたが、その一方で自衛隊の活動にも注目が集まった。自衛隊の活動が認知されるにともない、自衛隊への反感はどんどん薄れていった。
阪神淡路大震災以降、自衛隊の災害派遣への認識は大きく変わった。阪神淡路大震災で自治体との連携がうまくいかなかった教訓から、自衛隊への派遣要請はよりスムーズに行われるようになった。その一方で、日ごろから自治体との協力も行われるようになった。自治体の防災訓練に自衛隊が参加するというのは今や珍しいことではない。
2011(平成23)年の東日本大震災は、阪神淡路大震災に比べると、自衛隊の出動がスムーズに進んだ。2008年に行われた広域防災訓練の「2008年みちのくアラート」で自衛隊や自治体間の連携の確認と見直しが行われており、大規模災害への備えができていたことは大きい。今や自衛隊の災害派遣は当たり前のものとなっている。