熊本バス・鉄道5社「交通系ICカードやめます」 停止は年内予定、公共交通の運賃収受は本当にこれでいいのか?【連載】ホンネだらけの公共交通論(17)
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公共交通の柔軟性

ここでひとつ誤解がある。ユニバーサルデザインというと、ノンステップバスやエレベーターなど、
「誰もが移動しやすい手段」
を作ることだと思っている人が非常に多い。筆者(西山敏樹、都市工学者)が大学で講義をしていると、この点を誤解している学部生や大学院生を多く見かける。公共交通にとって重要なのは
「柔軟性」
である。例えば、駅のホームにエレベーターしかなく、エスカレーターや階段がなかったら、ラッシュ時のホームは人であふれかえるだろう。
・車いすの利用者
・ベビーカーを押す小さな子どもの親
・重い荷物を持った出張者
はエレベーターを使う。
・少し具合の悪い人
・軽いけがをした人
はエスカレーターを使う。健康のために階段を好む人もいる。このような組み合わせによって、誰もが自分の好みに応じて柔軟に移動できるようになれば、システム的にはユニバーサルデザインに達していると考えられる。
路線バス完全キャッシュレス化

さて、本題である。
国土交通省はこのほど、路線バスの運賃をキャッシュレス決済のみで運行できるようにする方針を打ち出した。完全キャッシュレスバスを認めることで、
・現金管理にかかるコスト
・ドライバーの負担
を軽減する狙いがある。筆者も通勤で都内の路線バスを利用するが、ときどき、運賃230円(均一)を5000円札や1万円札で払おうとする人がいて、運転手が困っているのを見かける。
札を崩せないとき、他の乗客に両替を頼む人もいる。これはドライバーの負担になり、バスの遅れの原因にもなる。事前に230円の硬貨を用意していない乗客が悪いのだが、
「交通系ICカードすら持っていない高齢者」
は意外に多いのだ。
一都三県に住む人の「約9割」が、交通系ICカードかモバイルICカードを利用しているといわれている。利用していないのは1割だ。大手クレジットカード会社のジェーシービー(東京都港区)が2022年3月17日に発表した「クレジットカードに関する総合調査」2021年版によると、クレジットカードを持っていない人の割合は14.1%となっている。