「停車前に立たないで」 バスドライバーを精神的に苦しめる“乗客転倒事故”の危険性、解決策はあるのか【連載】ホンネだらけの公共交通論(12)
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バスの乗客転落事故は深刻な問題だ。ドライバーにとって再び大きなストレス要因となっている。これをどう解決すべきか。
転倒リスクの課題

路線バスの「2024年問題」が顕在化し、ドライバー不足、人手不足が叫ばれている。筆者(西山敏樹、都市工学者)は路線バスの研究者なので、この問題についてマスコミやインターネットで意見を述べる機会が多い。
当媒体に「ホンネだらけの公共交通論」という連載でこれまで11本の記事を寄稿し、読者からのコメントを丹念に読んできた。その多くは率直なものであり、現場のドライバーと思われる人たちが書いたものも散見される。
それらを読んでいると、彼らにとって
「乗客のバス車内での転倒」
が大きなストレスになっていることが改めてわかる。
バリアフリー車両の普及

この傾向は、バリアフリーやユニバーサルデザインが問われ始めた2000(平成12)年頃から顕著になった。ノンステップバスやワンステップバスなど、従来にない低床車両が社会に普及し、リヤエンジン(エンジンを後部に搭載する後輪駆動方式)のバス車両は中ドアに大きな段差を持つことになった。
筆者は2007年から2008年にかけて、8輪インホイールモーター方式を採用し、車内の段差をなくしてフルフラットを実現した電気バスの試作開発プロジェクトに取り組んだ。8輪インホイールモーター方式とは、
「ホイールの内側に小型のモーターを付ける方式」
で、8個分のモーターのパワーが出るため、四輪車のような大きなタテの出っ張りも削減できるのだ。
この頃、車内事故を減らす目的で、全国のバス協会を回って車両開発をしていた。バス協会では、中ドアから後方への段差で転倒事故が多発していた。