廃止を避けるために減便も 危ぶまれる地方交通、北海道「沿岸バス」に乗って体感してきた
北の大地で見た現実

そんな現状を確認するべく、沿岸バスに乗車したのは2021年7月だ。1日4便が豊富駅前から出発しているが、これに乗車するためには豊富駅近くで宿を探すか、稚内で1泊後に宗谷本線で豊富駅前に移動しなければならない。筆者(碓井益男、地方系ライター)は後者を選んだ。
豊富駅は豊富町の中心駅で、特急も停車。駅前は市街地となっている。しかし長らく無人駅であり、人通りは少ない。正直なところ、「本当にバスは来るのだろうか」と不安になった。
2021年3月までは、駅前から西側、海沿いの稚咲内(わかさかない)エリアまで向かうサロベツ線が1日2便だけ運行されていた。しかし、自治体側は路線維持よりタクシーの乗車料金への補助金が有効と判断し、あっけなく消滅してしまった。
さて、バスは時間通りに来たが、筆者を除いて乗客はいなかった。途中、市街地で乗客がひとり乗ってきたが、すぐ近くの豊富温泉で下車。筆者が途中下車した羽幌までの区間に乗ってきた人はたった3人。それもすぐに下車してしまう。いずれも通勤で使っているように見えた。羽幌~留萌間はある程度の人数が乗ってきたが、決してにぎわっているわけではなかった。厳しい状況で維持されているのは一目瞭然だった。
路線の途中、羽幌には沿岸バスの本社社屋を兼ねた「本社ターミナル」がある。本社とはいうが、内装は木製の調度が目立つレトロな雰囲気で、現代的なバスターミナルの真逆である。昭和時代の雰囲気が好きな人にとっては、堪らないだろう。
路線バス維持への補助金は、国が実施する「地域公共交通確保維持改善事業費補助金」のほか、県や沿線市町村によるものがある。沿岸バスの場合は、そのほとんどを受けて維持している。いわば補助金に頼った赤字運行で、これによって住民唯一の公共の足が確保されている。
同社に限らず、補助金を得て赤字路線を運行しているバス会社は多いが、それでも路線維持は苦しい。通例、補助金は年度末などの決まった時期に一括で払われるため、バス会社にとっては運転資金としても利用しにくいからだ。