自転車ヘルメットの着用率わずか14% 「ダサいから被らない」は全然間違っていなかった! 努力義務化1年で考える
着用率向上の鍵

前述のとおり、最も普及している流線型のヘルメットはそのデザインゆえに、ロードバイク以外の自転車に乗る際には浮いて見えてしまうという問題がある。また、通気性がさまざま研究されているとはいえ、蒸れる。なにより、年々機能性はレベルアップしているが、ヘルメットをかぶると髪型が崩れる問題は解決されていない。
また、市場には、ロードバイク風とは一線を画す帽子にインナーヘルメットを内蔵したものやキャップ型のヘルメットも登場している。これらは一見、おしゃれさと安全性を両立する製品に見える。しかし、実際に使ってみると、
「通気性の悪さ」
は否めない。このように、現在のヘルメットが
・おしゃれ
・快適
・使い勝手
のいずれかを欠いているのだ。三拍子そろったヘルメットの開発は、なおも困難を極めているのが実情だ。デザインと機能性の高次元での両立は、容易には実現できそうにない。
となれば、着用率向上の切り札として考えられるのが、着用を努力義務ではなく
「義務化」
することである。果たしてこれは、最適解だろうか。義務化で最も懸念されるのは、利用者の減少だ。1986(昭和61)年に原付も含めて、バイク用ヘルメットの着用が義務化された際、いわゆる「86年ショック」が起きている。不便さを嫌ってバイク利用者が大幅に減少したのだ。自転車の場合も同様の事態が起きる可能性もある。
しかし、東京都が2023年に実施した都政モニターアンケート調査では、自転車利用者のヘルメット着用率向上に向けて「法令上、着用が努力義務ではなく着用義務にする」ことを求める声が
「61.2%」
に上った。「購入しやすい価格のヘルメットの普及」(60.4%)、「折り畳み式などの持ち運びが便利なヘルメットの普及」(49.1%)など、ヘルメット自体の利便性向上への要望も多いものの、義務化を望む声は多数を占めているのだ。
この結果は、多くの自転車利用者が、努力義務では着用率向上に限界があると感じていることの表れだろう。事故リスクの高さを認識しながらも、何らかの心理的障壁からヘルメット着用に至らない人々に対し、義務化というある種の「後押し」が必要だと考えられているのかもしれない。