自転車ヘルメットの着用率わずか14% 「ダサいから被らない」は全然間違っていなかった! 努力義務化1年で考える
科学的分析の結果

では、着用率を上げるためには、なにが必要なのか。
まず、比治山大学(広島県広島市)の山本敏久氏の論文「自転車用ヘルメットに対する消費者意識」(『比治山大学紀要』第30号)を紹介しよう。
この論文は、SNSへの投稿をテキストマイニングの手法で分析し、消費者のヘルメットに対する意識を探ったものだ。テキストマイニングとは、自然言語処理と機械学習の技術を用いて、大量のテキストデータから意味とパターンを抽出することである。その結果、人々の関心は次の4点に集中していることが明らかになった。
・事故が起きたときにヘルメットを着用していたかどうかによって、過失割合や保険の支払いなどに影響があるのかという疑問
・ヘルメット購入を促す補助金制度
・デザインの悪さ、蒸れるといった問題点
・ヘルメットの盗難
このなかで特に注目したいのは、ヘルメットのデザインや機能性が、大きな関心事になっていることだ。山本氏は
「様々な企業が自転車ヘルメット市場へ参入することで、多様なデザインの登場や製品イノベーションによる快適性の向上が期待できる」
と述べている。というのも、SNSの投稿の分析からは、ヘルメットを避ける理由の多くは、
「髪形が崩れる」
「みんながかぶっていない」
など、見た目や周囲の目を気にするものであることがわかったからだ。つまり、
「おしゃれで快適なヘルメットの登場」
が、ヘルメット忌避の意識を和らげる鍵となるというわけだ。また、山本氏は
「ヘルメットの保管、盗難防止、盗難補償などのヘルメット関連市場の拡大もヘルメットの普及に必要になる」
とも指摘。利便性と安全性を兼ね備えたヘルメット関連製品の開発も、普及率向上に欠かせないとの見方を示している。
つまり、事故時補償メリットや行政の補助金を周知した上で、おしゃれで快適なヘルメット(着用時以外の利便性も高い)があれば、着用率の向上が期待できるわけだ。しかし、そんなおしゃれで快適なヘルメットの開発は容易ではない。