環境団体&自動車団体の間で板挟み! 次期排ガス規制案「ユーロ7」の行方が全然見通せないワケ

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自動車の大気汚染物質に関する新たな排出基準を定めた新規制ユーロ7が3月中旬、欧州議会で賛成297票、反対190票、棄権37票で採択された。今後何が変わるのか。

板挟みのユーロ7

欧州の道路(画像:写真AC)
欧州の道路(画像:写真AC)

 当初案より緩くなったユーロ7に環境保護団体は不満であるが、2035年にゼロエミッションの乗用車しか新車販売できなくなるにも関わらず、今更ながらガソリン車・ディーゼル車へのさらなる技術開発や投資が迫られる矛盾に対し、自動車メーカーやサプライヤーが弱腰になるのはわからないでもない。

 また、車両1台あたりの追加費用も議論の的となっていた。欧州委員会は、ユーロ7(当初案)の実装には、1台あたり平均して80~180ユーロ(約1万3000~3万円)の追加費用を試算していたが、自動車工業団体の試算では4倍から10倍になり、世界的にみてヨーロッパ自動車産業の競争力が低下する懸念があると主張。当初案の緩和で追加費用の議論はひとまず下火となったが、細部まで決められていない規則が数多くあり、額の大小はあるものの追加費用は避けられないかもしれない。

 そもそも環境保護に向けて基準は厳しくなる反面、高価格となる自動車をいったい誰が喜ぶのだろうか。

 環境委員会のメンバーであるチェコの副議長は、ヨーロッパの産業と市民の両方に害を及ぼす環境政策を追求することは逆効果であるとし、

「環境目標と製造業者の重要な利益のバランスを取ることに成功した」

と、欧州会議の採決後に述べている。環境保護団体は不満だろうが、現実的というか、至極まっとうな感想と思えなくもない。

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