武蔵小金井駅の「武蔵」とは何か? なぜ「武蔵」が付いたのか、全部で21駅「武蔵駅名」の謎に迫る

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関東地方には「武蔵」の名を冠した駅が合計21もある。東京が最も多く11駅、次いで埼玉と神奈川が5駅ずつだ。なぜこんなに多いのか。

鉄道事業者の駅名権限

 駅名を鉄道事業者が決めたことに言及しているのは、武蔵小金井駅に関する資料だ。この駅は後の時代の資料では「小金井」という駅名を持つほかの駅と区別するために「武蔵」が冠せられたと説明されている。

 そこで、資料を探してみたところ、『小金井市史』資料編(2014年)の小金井停車場設置に関する文書に、駅名は

「すべて本省に一任」

と記されているものがあることが確認できた。ここから、鉄道省が「武蔵小金井駅」という駅名を決定したことが判明したのである。

 そこで、鉄道省(あるいは、前身の鉄道院)が、駅名を決定する権限を持っていたことを示す資料がないかも確認してみた。直接の資料は確認できなかったが、当時の新聞報道から国では早い時期から駅名の重複を避ける方針をとっていたことがわかった。

『読売新聞』1914(大正3)年11月13日付けには次のような記事が載っている。

「鉄道院線に於ける同時駅名は一ノ宮の五カ驛を始め八十六驛異字同音三十五驛あるを以て鉄道院にては之が整理をなすべく各驛に吏員を派し調査を為さしめ居たるが今回決定せる分より改称をするに決し既に長岡驛は東海道信越東北三線に存在し居たるも東北線長岡は「伊達」と東海道長岡は「近江長岡」と改称公布せるが今後引続き改称の筈なりと云ふ」

ここからは、駅名の重複を避けるために、もっともわかりやすい手段として旧国名を用いることが全国的に行われていたことが類推できる。では、「武蔵」の名を冠した駅が21駅はすべて旧国名なのかといえば、そんなことはない。豊富な資料が残る駅では、より複雑な事情もわかるものがあった。

 そこで、この記事では、上記の武蔵小金井駅以外に資料が残る武蔵浦和駅・武蔵砂川駅・武蔵小山駅の三つの駅の駅名決定に関する事情を紹介していくことにする。

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