トラックドライバー「10%賃上げ」は現実的か? 基本給を低く抑える“給与体系”が生み出す運送業界の歪みとは

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政府は、トラック運転手の賃金を約10%引き上げることができると想定している。この目標は本当に現実的なのだろうか。

給与体系の特殊性

某社の集配ドライバーの給与例(画像:久保田精一)
某社の集配ドライバーの給与例(画像:久保田精一)

 このように、春闘を通じた賃上げも順調ではないのだが、これに加えて、トラックの賃上げが難しい要因がある。すなわち、ドライバーの給与体系の特殊性である。

 トラック運送業では、下表に示したような、

「基本給を低く抑える給与体系」

が広く採用されている。サラリーマンの給与は、基本給で大部分が支給されるのだが、ドライバーの場合、基本給を下げる代わりに、成果給等で給与をかさ上げするのが一般的である。

 このような給与体系を採用する理由は、ドライバーの長時間労働である。残業時間が長いことにより、基本給を高くすると、残業手当(超過勤務手当)が月の残業時間の変動によって大きく上下してしまう。

 そのため、人件費の急激な変動を避けたいトラック会社は、基本給を抑えたうえで、例えば売り上げに連動する「成果給」など、他の名目で給与を補っているのである。

 そしてこのような給与体系においては、基本給を同率で上げる「ベースアップ」によって賃上げを実現することは難しい。なぜなら、給与に占める

「残業手当と成果給の割合」

が非常に高いからである。

 仮に基本給が1割増えたとしても、働き方改革で残業時間が1割程度減れば、総支給額はほとんど増えない。労働時間が減る影響で仕事量が減り、成果給が削られてしまえば、給与総額はむしろマイナスになる可能性さえある。

 このように、

「ベースアップ = 賃上げ」

とならないのが、トラックドライバーの給与なのである。

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