「乗り換え面倒」 北陸新幹線・敦賀延伸が招いた“落とし穴” 福井は近く、関西は遠くなった庶民のリアル
かつては繊維産業の往来

北陸3県は言葉が関西弁に近く、関西と密接な関係を持っている。福井県西部の若狭地方と京都市を結ぶ若狭街道は「鯖(さば)街道」と呼ばれ、古くから京都へ日本海の物資を運んできた。
戦前から高度経済成長期にかけては、繊維産業が北陸と関西を結んだ。当時、石川、福井の両県は日本を代表する繊維産地。大阪市は繊維製品を扱う問屋が集中していた。このため、関西と北陸の往来が盛んで、サンダーバードやその前身の「雷鳥」は“繊維特急”と呼ばれていた。
福井県産業技術課は
「生産拠点の海外移転や大阪の企業の多くが東京都へ本社を移転したことから、当時ほどの往来はないが、密接な付き合いに変わりない。乗り換えでビジネスが不便になるかもしれない」
と不安がる。京都市の村田製作所が福井県に関連会社、大阪市の参天製薬が石川県に工場を置くなど、繊維以外の産業も関西との結びつきが深い。
大学進学にも影響

北陸3県の高校生が北陸を出る場合、京都の大学へ進学し、大阪の企業に就職するのが一般的だった。福井県教育庁によると、2023年に福井県の高校を卒業した若者の進学先トップは京都府で、2位は大阪府。今も関西志向が続いている。
しかし、文部科学省によると、石川、富山の両県は北陸新幹線が金沢延伸した次の年の2016年卒業生から東京都がトップに立ち、
「首都圏志向」
に変わった。関西の大学や企業からすると、北陸出身者の確保が難しくなりつつある。
観光への影響も頭が痛い。福井県は温泉客や名所を訪れる観光客の7割程度を関西や東海から集めてきた。当分は新幹線延伸効果で首都圏からの誘客が見込めるとしても、リピーターとなってきた関西の客を失う危機にさらされている。
「関西の奥座敷」と呼ばれるあわら市の芦原温泉では、ベテランの女将が
「兵庫県の城崎温泉など特急1本で行ける地域に客を奪われかねない」
と危機感を募らせる。福井商工会議所も
「関西との縁をつなぐには、新幹線を大阪へ延伸させる必要がある」
と語った。