ボーイング・エアバスから市場を奪還? 中国初の国産機「C919」は、欧米寡占を打ち破る突破口となれるか

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2月に開催されたシンガポール・エアショーでは、中国のCOMACのC919が初の海外デビューを果たし、世界的な注目を集めた。米国とEUの寡占状態を打破する突破口となり得るのだろうか。

米国・EUの寡占を崩す可能性

YS-11(画像:写真AC)
YS-11(画像:写真AC)

 高地型の旅客機というのは耳慣れない存在だが、実は標高の高い空港では空気密度が低下するため、航空機の離着陸性能が低下してしまう。

 日本では標高657.5mの松本空港が最も高く、そのせいで開港当初は航空会社が就航に二の足を踏んだほどだが、中国のチベット地域などには4000mを越える空港がいくつもある。

 そのほか、南米のペルーやエクアドルなどにも3000m級の空港は多く、かつてYS-11が南米へセールス活動を行った際、高標高空港での性能要求を思い知らされたという逸話は、日本の航空業界にも広く伝わっている。

 COMAC社が高地型を投入したのは、そうした自国のニーズだけでなく、同様に高標高空港を抱える国々へのアピールという意味もあるだろうが、技術的にはもうひとつの意味がある。それは、

「温暖化の影響による気温上昇」

だ。2023年7月には、英国の格安航空会社がカナリア諸島で運航するエアバスA320が、高気温のため乗客を降ろさざるを得なかったというニュースが報じられたが、これも高気温による空気密度低下のためであり、高気温と高標高は技術的には同じ問題である。もし、今後も気温上昇による運航への影響が拡大していくとすれば、高地型の存在はセールスポイントになり得る可能性がある。

 今後、C919には胴体を短縮した高地型だけでなく、胴体を延長したモデルの開発も進められるはずだ。そうした派生型がそろえば、航空会社はC919シリーズによる機材編成を採用でき、それが外国エアラインに波及するなら、中国製旅客機が

「米国と欧州連合(EU)の寡占」

を切り崩す突破口になる。

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