富山は成功したのになぜ? 全国「LRT化」を阻むものの正体
LRT導入は都市再開発の一部

中断の理由は、三者の大幅な財政悪化だ。
JR西日本の2020年4月から12月までの売上高は前年の4割程度に落ち込み、第三四半期までの連結純利益で1618億円の赤字となった。岡山市と総社市も税収の減少と新型コロナ対策費でダメージを受けた。こうして高齢化を見据えたLRT化は再び暗礁に乗り上げた。
吉備線と富山港線の明暗をわけたのは、何だったのか?
もともと、富山港線は富山市内中心部への通勤・通学路線として利用されていたが利用者は少なく、1日に20本程度の列車が走る路線だった。その後、北陸新幹線の開業を前に富山駅の高架化が計画されると、高架化費用に対する需要が見込めないため、富山港線は廃止となる可能性もあった。
ところが、バスへの転換による利便性の低下や渋滞の可能性もあり、LRT化が決定。駅数も増加し、最大10分間隔の運行となったことで、閑散とした路線は一変した。
それに比べて、吉備線は現在でも岡山市~総社市間の幹線として需要があり、急ピッチでLRT化を進める必然性がなかった。また、富山港線の営業キロが8kmだったのに対して吉備線は20.4kmと、交差する道路の改良も含めると費用は膨大で、その捻出先がまとまらなかったことも大きい。LRT導入の避けられない問題――。それは、既存路線を改良するだけでも膨大な費用がかかることだ。
また都市部であれば、工事は交通量の多い道路を含む大規模なものとなる。冒頭で記した江東区の場合、JR越中島貨物線と明治通りを利用するとしているが、交通量の多い明治通りでは工事計画も難航することが予想される。中央区でも一時は晴海通りにLRTを建設する、「都電の復活」ともいえる案が浮上したものの、すぐに立ち消えとなった。晴海通りは現在でも慢性的に渋滞しているため、LRTの新設は困難だろう。
LRTの導入は都市再開発の一部とも言える。都市の将来像と、それを可能にする予算をまとめることには今後も困難が付きまとうだろう。