「新型クラウン」の成否は、日本の未来を占う“真のベンチマーク”である
筆者は新型クラウンの世界的な成否こそが、今後の日本の産業力と発信力を示す真のベンチマークになると考えているという。いったいなぜか。
日本仕様と海外市場

一方、国内では好調だったこのクラウンだが、海外市場には出なかった。性能やデザインの問題などさまざまな要因があったといわれているが、最大の問題は、日本の道路事情が欧米の主要都市とあまりにも違ったことだろう。
日本の事情に合わせすぎるあまり、ふんわりしたシートやサスペンション、ときにはエンジンがかかっているのかどうかわからないような高い静粛性などが重視された。これらは、しっかりとした運転感覚を求める欧米のドライバーが求めているものとは違うだろうし、ボディサイズ、特に横幅の小ささは窮屈に感じるだろう。
セダンのカムリやRAV4などのSUV、レクサス各車など、主に海外市場をターゲットにした車は、エンジンやボディサイズなど、最初からそれを意識して設計されている。つまり、両者は異なる立場から出発しているのだ。
実は、車以外の世界でも似たような歴史が見られる。
初代クラウンが登場した前年の1954(昭和29)年11月。日本に類いまれな「コンテンツの怪物」が誕生した。海外でも類を見ないほど長い期間、日米で製作され続けている映画界のキング・オブ・モンスター「ゴジラ」である。
公開当初は“ゲテモノ映画”と酷評されたが、結果的には観客動員数961万人の大ヒットとなった。その後、主人公を米国人記者に置き換えて再編集した『怪獣王ゴジラ』が北米でもヒットした。
以来、日本やハリウッドで、ときには10年以上の間隔を空けて新作が作られ続けている。まさにコンテンツ界の「王」といっていいだろう。