訪日観光客の96%が日本に「満足」 もしそうなら、観光は“平和”を創造できるかもしれない【リレー連載】平和産業としての令和観光論(4)

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コロナ禍や世界各地の戦争を乗り越え、観光が平和と国際協力に与える影響を探るリレー連載。異文化理解や対話の促進を通じて、観光は「平和産業」としてどのような役割を果たすべきかを検証する。

危機と安堵のフライト

飛行機(画像:写真AC)
飛行機(画像:写真AC)

 観光は「平和産業」である。

 筆者(鳴海汐、日英比較ライター)のように仕事や留学で遠方に移動するのも、平和でなければ難しい。それを痛感したのは、ウクライナへの軍事侵攻が始まって1か月後に英国から帰国するときだった。

 ビザの関係で英国を出国しなければならない。移動も危険かもしれないが、早く日本に帰らないと戦争が広がって帰れなくなるかもしれない。ブリティッシュ・エアウェイズに乗ったらロシアに追撃されないとも限らない、ロンドンの空港を利用する自体危険かもしれないと考えながらも、何かのときに安心なJALの直行便フライトを選択した。

 ロシア上空を飛べなくなったので、通常11時間55分のところ、北極圏経由で所要時間が16時間25分となった。実際は15時間半くらいで済んだが、長時間乗りっぱなしで疲労困憊(こんぱい)した。

 新型コロナウイルスが発生して渡英を延期したこともあったし、その後移動して、英国到着時も日本到着時もフライトの濃厚接触者になり、隔離が急きょ必要になったり長引いたりしたこともあった。パンデミック(世界的大流行)のロンドンでは外出が制限されて滞在エリア外に出て行けなくなったり、屋外で過ごすのに最大ふたりと人数制限されたり、公園に行くにも運動目的しかダメで、立ち止まってはいけないと警官に追い立てられたりしたことも経験した。

 たった4年ほどの間に、

「平和だからこそできる移動、滞在、観光だ」

と、何度考えさせられたかわからない。

 世界各地で戦争が起こり、世界は不穏さを増しているが、コロナ禍に関しては日常が戻ってきた。外国人観光客の姿もあちこちで見かけるようになった。この秋、山奥の乳頭温泉郷(秋田県仙北市)を訪れたときも、その多さに驚いた。

 実際、訪日外客数は2023年10月に約252万人、11月に約244万人に達し、「インバウンド」という言葉がはやった2019年の同月水準に追いついた。

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