登戸駅「南側再開発」で周辺はどう変わる? かつてはスーパーマーケット“真空地帯”も、今後大きな伸びしろか

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登戸駅南側の再開発で、この地域はどう変わるのか。現在、小田急線の西側には医療モールや飲食店が目立つ。

上昇する土地単価の変動率

登戸駅、向ヶ丘遊園駅周辺の地価。「登戸・向ヶ丘遊園駅周辺地区 まちづくりビジョン(案)」より(画像:川崎市)
登戸駅、向ヶ丘遊園駅周辺の地価。「登戸・向ヶ丘遊園駅周辺地区 まちづくりビジョン(案)」より(画像:川崎市)

 区画整理は難航した一方で、登戸駅周辺は2010年代以降、住みたい街としての存在感を強めた。人気の理由は、

「都心へのアクセスのよさ」

である。小田急線で新宿まで約20分、南武線で川崎まで約20分。南武線も川崎まで20~23分と利便性は抜群だ。

 川崎市が2021年に作成した資料によると、登戸駅・向ヶ丘遊園駅周辺1平方メートルあたりの土地単価が

・商業地:約24万円(変動率39.4%)
・住宅地:約10万円(変動率42.4%)

上昇している。

 人口を見ると、地域の属する多摩区の人口は、1982(昭和57)年以降一貫して増加を継続し2020年時点で約21万人となっている。

 このうち、登戸駅・向ヶ丘遊園駅周辺では若年層の割合が川崎市全体より高い(20代の場合川崎市全体で12.4%なのに対して両駅周辺は20.9%)。少子高齢化によって多摩区全体では人口減がはじまると試算されているが、この地域は“例外”なのだ。

未来へのスーパー設置に期待

登戸駅北側には複合ビルも見られるようになっている(画像:昼間たかし)
登戸駅北側には複合ビルも見られるようになっている(画像:昼間たかし)

 登戸駅周辺の人口は年々増え続けているが、生活に根ざした店舗は少なかった。これは、高度経済成長期以降の駅周辺の急激な人口増加に商業地の整備がともなわず、住宅地が開発されたからだ。

 商店街は小田急線西側の登戸駅前商店会に限られていた。一方、隣の向ヶ丘遊園駅周辺は、北口に区役所通り登栄会商店街と登戸東通り商店会、南口に民家園通り商店会と中和ビル商店会が形成された。

 登戸駅周辺の店舗の少なさは以前から指摘されていた。この記事を書くにあたって改めて街を歩いてみたが、状況は変わっていなかった。駅周辺にはマンション建設現場が多く見られるが、店舗は少ない。小田急、JR両駅の駅舎にわずかな飲食店が進出している程度である。

 特に駅の南側は、住宅が密集しているにもかかわらず、スーパーマーケットがないいびつな構造になっている。かつて駅南側にはフレスコベンガベンガ登戸店があった(2017年に区画整理で小田急線を挟んだ西側から移転)。これは再開発予定地内での仮営業であり、2020年10月に川崎市との賃貸契約が満了したため閉店した。

 駅の南側にはコンビニと小さなドラッグストアしかない(まいばすけっととライフがあるが、駅から遠い)。小田急線を挟んだ西側には、マルエツ登戸駅前店(2020年オープン)とオーケー登戸店(2021年オープン)があるのに比べて、不便だ。JR側の駅ビル(味の食彩館のぼりと)には、総菜を中心としたスーパーがあるが、価格が高めだ。駅南側は、日常の買い物の利便性に欠けるといえるかもしれない。

 今後建設されるタワーマンションにどのような商業施設が入るかは不明だが、人口増加が見込まれる駅南側には、スーパーマーケットの新設が急務だろう。

 登戸駅と向ヶ丘遊園駅周辺地域は、一体のものとして考えた場合、これまでのにぎわいは向ヶ丘遊園駅周辺のほうに偏っていた(もっとも向ヶ丘遊園駅も充実しているとはいいがたかったという指摘もある)。再開発によって、今後は登戸駅周辺、そのなかでも駅南側が地域の拠点として発展することも、想定できる。

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