ベースは自衛隊車両! トヨタ「メガクルーザー」は真のヘビーデューティモデルだった【連載】90’s ノスタルジア・オン・ホイールズ(9)

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1990年代は、バブル崩壊後も未来への夢と希望に満ち、国内の自動車産業も活況を呈していた。本連載では、当時のクルマ文化を探るとともに、興奮を読者に甦らせる。

多目的開発の軌跡

メガクルーザー(画像:トヨタ自動車)
メガクルーザー(画像:トヨタ自動車)

 一般ユーザーに向けて市販されるクルマのなかには、ときとしてとてつもなくイレギュラーなモデルが登場することがある。それは時代の要請であったり、メーカー側の都合だったり、登場の理由はさまざまである。

 そうしたなか、自衛隊向けに開発されたモデルが民間向けに姿を変えて販売された例が1990年代にあった。それは1996(平成8)年1月に発売されたトヨタ・メガクルーザーである。

 メガクルーザーの原型となったのは、現時点で代表的な自衛隊車両の

「高機動車」

である。

 自衛隊関連のイベントはもちろんのこと、任務遂行中の車両が公道を走行することも珍しくないため、実際に見掛けたことがある人も多いはずである。

 高機動車の開発が始まったのは1990年代初め頃のこと。米軍が装備していた、いわゆるハンビーに匹敵する多目的性能および優れた機動性を持つ普通科(歩兵部隊)用車両というのが開発の目的だった。開発に当たったのはトヨタである。

 この車両については自衛隊だけに止まらず、必要に応じて官公庁や地方自治体などでの災害対策車両とするとの別の目的もあった。そこでエンジンやトランスミッション、足回りなどの基本となるメカニズムはそのままに、より汎用(はんよう)性の高いクローズドバンボディを架装したモデルが開発された。これがメガクルーザーである。

 メガクルーザーのメカニズムにおいて、最も特徴的だったのは駆動装置とその足回りである。エンジンは4.1リッターの直列4気筒ターボディーゼル。トランスミッションは4速ATと特に変わったメカニズムではなかったが、トランスミッションから後方のフルタイム4WDセンターデフ&トランスファー。そしてハブリダクション(車輪の部分でも減速し駆動力を増すメカニズム)とインボードディスクブレーキといった具合に通常のオフロード4WDとは一線を画すユニークなメカニズムの集合体だった。

 その一方で、インテリアの仕上げや装備品はというと、あたかもトラックのベーシックモデルレベル並みに質素であり、車両本体価格のみで1000万円近い高価格車とは思えない質実剛健さが特徴でもあった。

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