ボルボはなぜ「ミニバン市場」に参入したのか? そして、なぜ中国先行販売なのか? 新型EVプレミアムMPV「EM90」発表で考える

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ボルボ・カーは新型EVのプレミアムMPV「EM90」を世界初公開し、中国での予約受付を開始した。その背景にには何があるのか。

北欧デザインの新星

ボルボEM90(画像:ボルボ・カー・ジャパン)
ボルボEM90(画像:ボルボ・カー・ジャパン)

 2023年11月12日、ボルボ・カーは新型電気自動車(EV)のプレミアム多目的乗用車(MPV)「EM90」を世界初公開し、中国での予約受付を開始した。同社初のミニバンということで、中国のみならず世界中で話題となっている。ボルボが発表したプレスリリースによると、EM90は1953年に発売されたエステートモデル「デュエット」にインスパイアされたもので、MPVセグメントが本格的に普及する何年も前から、同社が多用途で広々とした車を開発していたことに触れている。

 かつては角ばったセダンやステーションワゴンで知られていたボルボだが、近年は丸みを帯びたデザインを多用したスポーツタイプ多目的車(SUV)も投入している。これらのモデルの変遷を経て、ボルボが今回初めてミニバン市場に参入した理由を考えてみよう。

 まず、EM90がどんなモデルなのか、主な装備と仕様を見てみよう。主なスペックは、

・3列シートで定員6人
・2列目にはマッサージ機能などを備えたラウンジシート
・搭載モーターの最高出力200kWで、0~100km/h加速は8.3秒
・80%までの急速充電の所要時間は、30分以内
・最大航続距離738km(CLTCモード)

となっている。

 パノラミック・サンルーフに覆われたインテリアは、カーテンとアンビエント照明で北欧ムードを演出し、「走る北欧インテリア」をほうふつとさせる。また、シフトレバーやダッシュボード、ドアにもスカンジナビアンデザインを多用し、高級感を演出している。また、フロントグリルには、ボルボ初のイルミネーションロゴを含む「イルミネーションフロント」が採用され、これまでにない先進的なイメージで注目を集めている。

 これだけ完成度が高く、ボルボ初のミニバンなのだから、世界展開されるのも当然だろう。しかし、なぜ中国で先行販売されたのか。その理由は次のように考えられる。

・中国市場では、MPVが売れ筋で急成長している
・ボルボの親会社である吉利汽車のプレミアムEVブランド「ジーカー」とプラットホームを共有しており、シナジー効果を狙っている

 これらふたつをさらに深掘りしてみよう。

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