渋滞緩和と事故減少 「貨客混載」は本当に交通の未来を塗り替えるか? デメリット込みで考える
ここ10年で、バスやタクシー、電車が人だけでなく荷物も運ぶ「貨客混載」のケースが増えている。そのメリットとデメリットとは。
新幹線輸送のアドバンテージ

その象徴的な例が、鮮魚などの特産品を新幹線で輸送する取り組みだ。例えば、富山県産の鮮魚は金沢駅から東京駅まで、イチゴは仙台駅から東京駅まで運ばれている。昭和の時代には、鮮魚を運ぶ貨物列車が「特急貨物列車」として運行され、旅客列車よりも優先されたこともあり、“令和版の鮮魚列車”が登場したといっても過言ではないだろう。
新幹線よりも迅速に荷物を輸送できる唯一の交通手段は、航空機である。そして空港は通常、消費地からある程度離れた場所にあるのに対し、新幹線は大都市の駅に直接乗り入れている。これは航空機に対する大きなアドバンテージである。
新幹線による荷物輸送は好調のようで、現在、東北・上越・北陸・九州新幹線の主要駅から別の駅まで、個人でも即日輸送が可能だ。山陽新幹線では、大阪市内のホテルから福岡市内のホテルまで新幹線を使って荷物を運ぶサービスも行っているが、これは主に訪日外国人をターゲットにしているようだ。
また、JR東日本では、通常の新幹線車両を使った荷物専用列車の運行も視野に入れた実証実験を行っている。貨客混載は、今後の「物流のあり方」「公共交通のあり方」を変える可能性を秘めているといえるだろう。