渋滞緩和と事故減少 「貨客混載」は本当に交通の未来を塗り替えるか? デメリット込みで考える
ここ10年で、バスやタクシー、電車が人だけでなく荷物も運ぶ「貨客混載」のケースが増えている。そのメリットとデメリットとは。
公共交通の転機

かつては、人はバスや電車で運び、荷物はトラックや貨物列車で運ぶのが一般的だった。しかし、ここ10年ほどの間に、普通のバスやタクシー、電車が人だけでなく荷物も運ぶ「貨客混載」のケースが増えている。ヤマト運輸は2011(平成23)年5月、京都府内で京福電鉄の路面電車(嵐電)を使った宅配便輸送を開始した。それまで大型トラックで運んでいた、久御山町の物流ターミナルから嵐山担当営業所までの荷物輸送を路面電車に切り替えたのだ。
2015年には、やはりヤマト運輸が岩手県と宮崎県で路線バスを使った輸送を開始した。バスや電車などの公共交通は、よほどのことがない限り時刻表どおりに決まった場所まで運行されるため、車両の空きスペースを利用して荷物をまとめて輸送することは、公共交通の有効な利用方法といえる。
これまで、旅客用車両であるバスによる荷物輸送については、その重量に規制が設けられていた。しかし、上記のような動きを背景に、2017年9月、国土交通省は乗り合いバスによる荷物輸送の重量制限(350kg未満)を撤廃し、過疎地域における貸し切りバスやタクシー、トラックによる貨客混載を解禁した。
2020年11月には「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」が改正され、貨客混載の手続きが迅速化された。2023年には、それまで過疎地域に限られていた貸し切りバス、タクシー、トラックによる貨客混載が全国で解禁された。